Q.教員としてご自身の専門分野を踏まえ、「研究者として研究」することの意味とは?
厳密なプロセスを経て新しい知識を生み出すこと
学問というものは、認められた一定の客観的な基準に従って展開されるものであり、私の対象としている近代経済学で言うなら、ミクロ的な主体の行動に関する定式化や市場均衡の定式化などがそれに相当します。また、多くの研究テーマには先人がいて、多数の研究が残されている場合が多いです。以上のことから、研究のプロセスは、いつも先人の研究と自身の方法論に関する批判的な検討を要素として持っています。こうした厳密さを要求されるプロセスを経て、新しい知識を生み出すことが、研究者として研究することの意味であると思います。
Q.教員としてご自身が、研究者になった経緯をご紹介ください。
経済学の講義を聴いて、他学部から転身
もともとは経済学部の学生ではありませんでしたが、所属していた学部で受けた経済学の講義を通じて経済学に関心を持つようになり、経済学部に学士入学をしました。就職活動もしましたが、結局は大学院に進学することとなり、研究者となりました。この過程で多くの先生や人々にお世話になったのですが、討論、論文の書き方、発表の仕方、研究テーマなど、私の研究者としての基礎は、ほとんどこのプロセスで形成されたものです。
Q.教員としてご自身のご専門分野について、現在までにどんなテーマを研究されているのかご紹介ください。
経済成長モデルと戦間期の日本経済の分析
私の研究テーマの柱はふたつあり、ひとつはマクロ経済学の理論的な研究でありますが、年齢のせいか少し古いジャンルが多く、経済成長の基本的なモデルであるラムゼイのモデルに関する分析や、二重構造論の一般均衡モデル化のような学説史に近い研究もあります。もうひとつは第二次世界大戦以前の日本経済に関する分析であり、特に両世界大戦間期(1920~1930年代)を中心的に研究しています。このジャンルは、過去に膨大な研究の蓄積があるのですが、それらを踏まえ、より新しい分析ツールを用いて、新たな知見を発見できないかどうかを検討しています。
Q.研究者として、つらかったことや、嬉しかったことは?
思うようにはいかないが、成果につながると嬉しい
つらいことと言えば、理論にせよ実証にせよ、研究というものは、なかなかいうことを聞いてくれないところがあり、思うような結果が出せず、妥協したりあきらめたりしなければならなくなることがしばしばあります。うれしいことと言えば、ありきたりですが、そうした厳しいプロセスを経て、論文のような成果に結実することでしょうか。
Q.大学院で学ぶことの魅力とは?
ひたすら研究に打ち込める
他の仕事を意識せずに、ひたすら研究に打ち込めることでしょう。また研究が今すぐには役に立たない基礎的・抽象的なものであっても、大学院であれば許容されると思います。ですから、自分の興味・関心を良い意味で個性として、遠慮なく伸ばしていけることが魅力ではないかと思います。
Q.大学院で学びを考えている受験生にメッセージを一言。
研究と発表の経験を人生のプラスに
大学院に進学して、自分の関心に基づく研究とその発表を経験することは、研究者にならなかったとしても、皆さんの人生にとって大いにプラスになるものと思います。比較的若いうちは、進路に迷うこともあろうかと思いますが、選択肢の一つとして検討されてみてはいかがでしょうか。
プロフィール
氏名:斎藤 孝(さいとう こう)
経歴:現在、東洋大学大学院経済学研究科経済学専攻 教授
1999年に東洋大学に専任講師として着任。2002年に助教授、2009年より教授。
専門:マクロ経済学、両世界大戦間期の日本経済に関する分析
掲載されている内容は2022年7月現在のものです。
MORE INFO. 関連情報