Q.教員としてご自身の専門分野を踏まえ、「研究者として研究」することの意味とは?
人とは違う自分なりの研究を
労働経済学と行動経済学が専門分野です。働き方改革、新技術と雇用のような社会的要請の高い研究と、規範意識の形成とその影響といった個人的に関心のある研究に取り組んでいます。レベルはともかく、人とは違う自分なりの研究の蓄積が社会を豊かにすると考えています。一人ひとりが自尊心をもち、互いに共感を持てるような社会にするにはどうすればよいかを自問して心に引っかかることが研究の動機になります。
Q.教員としてご自身が、研究者になった経緯をご紹介ください。
なぜ一生懸命働くのか
小学校の登下校中に、様々に働く大人の人たちを見かけました。なかには一生懸命働いていても不遇な状況にある人もいました。なぜそうなるのかを知りたいと思い、経済学を学びました。自分に働いた経験がないのに労働研究ができるのだろうかと素朴に考えて、大学卒業後は三菱重工業に就職しました。職場や友人に恵まれて4年間働いた後、初心に戻って大学院に進学しました。その後は、あちこちで働いて2017年に東洋大学に着任しました。
Q.教員としてご自身のご専門分野について、現在までにどんなテーマを研究されているのかご紹介ください。
働くことを定量・定性の両面から分析する
大きく3つもあります。一つは、日本の雇用システムに関するもので、非正規雇用、継続雇用、在宅勤務などの研究です。二つ目は、人工知能などの技術と働き方に関するもので、定量・定性の両面から分析します。最後は、規範意識や非認知能力などです。労働規範、性格特性、ワーク・エンゲイジメント、組織市民行動などの規定要因と成果を研究します。全体のバランスとして、生計につながる仕事6割、楽しみの仕事2割、自分しかやらない仕事2割が理想です。
Q.研究者として、つらかったことや、嬉しかったことは?
知的な感動が励みになります
幸いにもいろいろな面で恵まれてきました。嬉しかったこととして、知的な感動があります。面白い論文や本に出会い、自分と同じ考えの人がいるのだと発見して喜んだり、見事な考え方に触れて自分の能力の向上を実感したり…。学部・大学院で恩師に恵まれたことも幸いでした。到底及ぶことのない憧れの存在は、研究上の大きな励みになります。国内外の教育・研究機関において、経済学を共有知識として様々な人と一緒に学んだり働いたりできたことも楽しく有意義な経験です。どこにいても自分のままでいてよいという発見は自信にもなりました。
Q.大学院で学ぶことの魅力とは?
勉強に没頭できる幸せがあります
やはり朝から晩まで勉強できることだと思います。とくに修士課程では、専門分野の基礎知識から最先端の研究動向までを駆け足で学んで、見晴らしのよい場所まで進むことができます。専門性や人生戦略をしぜんと意識するようにもなります。経済学のどの領域を専門にするか、論文のテーマ、分析方法、データ、その選択の一つ一つが自身のスキルを形成してその後の人生を拓いていきます。
Q.大学院で学びを考えている受験生にメッセージを一言。
後先考えずに飛び込んでみる
私自身がそうでしたが、心にわだかまるものがありどうしても考えたいという人には、大学院に入り、一度立ち止まって考えることをお勧めします。そうすれば、大学院修了後には、働きながら学ぶ、走りながら考えることができるはずです。いずれにしても、学びたいと思ったときが学び時なので、先々のことをあまり考えないで飛び込んでみると(良くも悪くも)しぜんと道は開けます。この記事をお読みいただいた皆さんと一緒に勉強できる日が来ることを楽しみにしております。
プロフィール
氏名:久米 功一(くめ こういち)
経歴:現在、東洋大学大学院経済学研究科経済学専攻 教授
一橋大学経済学部卒業。博士(経済学:大阪大学)
徳島県生まれ。民間企業や研究機関等を経て2017年より東洋大学。
専門:労働経済学、行動経済学
掲載されている内容は2022年7月現在のものです。
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