2025年3月18日(火)
第9回中学校修了式を挙行しました。生徒たちは中高一貫6年間のうち前半の教育課程修了という節目を迎え、義務教育を卒業しました。これまでの3年間で身につけた「考える力」を、これからの3年間でさらに成長させ自立していくことを決意し、気持ちを新たに前へ進んでいきます。
本校はこれからも歩みを止めることなく「生徒と教職員が共に成長し続け、常に進化し続ける学校。保護者・地域のご期待に応えられる学校」を目指し、地域の教育の発展に貢献してまいります。
それでは、当日の様子を紹介します。
修了式の様子
卒業証書授与
賞状授与
他者の模範となり、品行方正で学業成績優秀な生徒に贈られる井上円了賞、全国私学連合会会長賞、兵庫県私学連合会会長賞をそれぞれ1名に、特別功労賞を2名に、皆勤賞を9名に授与しました。
学校長式辞
第9期生86名の中学課程修了に式辞を述べました。
育友会長お祝いのことば
下級生はなむけのことば
第9期生の思いを感じ、彼らの背中を見て成長してきた下級生は、第9期生から伝統を受け継ぎ東洋大学附属姫路中学校を引っ張っていくことを誓いました。
修了生よろこびのことば
先生方に3年間の指導へ感謝を表し、そして15年間見守り、支えてきてくれた家族にお礼を伝えました。
高校生活への期待と不安を感じる中でも、家族への感謝を忘れることなく、各々の目標に向かって積極的に学び、高校生としての誇りと責任を持ち東洋大学附属姫路高等学校を引っ張っていけるよう、努力することを誓いました。
- 学校長式辞
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式 辞
日毎に春めいてきました今日の佳き日、東洋大学附属姫路中学校・第九回修了式を、このように盛大に挙行できますことは、誠にありがたく感謝にたえないところであります。
また、保護者の方々におかれましては、お子様の栄えある中学課程修了を、心よりお喜び申し上げます。この三年間、本校教育の発展にお力添えをいただきましたことを、深く感謝いたします。
さて、中学3年生の皆さん、中学課程修了おめでとうございます。本日の修了式は、皆さんの長い人生の中の大事な節目の一つです。中高一貫の本校ではありますが、過ぎ去った三年間を静かに顧みて、今後の在り方について思いを新たにしてこそ、東洋大学附属姫路高等学校へ進学する資格があります。本日の修了式の意義は、まさにこの点にあります。
皆さん一人ひとりが、かけがえのない天分や才能を持っています。人それぞれに花あり、大いに天分を発揮し、自分にしか咲かすことのできない花を咲かせてほしいと思います。そのためには、「利他の心」を忘れずに、「人に優しく、己に厳しく、勉強はたゆみなく」の目標に向かって、どのような努力を傾けたのか、繰り返し問われるところであります。
以上のような観点に立ちつつ、皆さんに、はなむけの言葉として「稚心を去れ」を贈りたいと思います。「稚心」とは、幼稚な心、おさな心です。すなわち、幼稚な心、おさな心を捨てよ、ということです。
幕末に目を転ずれば、産業革命によって近代化を成し遂げた欧米諸国が、日本に開国を迫ってきました。国内では、攘夷か開国か、大きく二つの意見に分かれました。特に1853年、アメリカのペリー提督が軍艦四隻を率いて浦賀に来航、武力を背景に国交を求めるに及んで、攘夷、開国の対立が激化しました。国家としての体をなさない幕藩体制では、とうてい対処し難い、危機の時代を迎えたのです。このような時代に活躍した人に、橋本左内がいます。左内は越前福井藩士、二十歳そこそこの若さで藩主・松平春嶽の信頼を得て、藩政改革に尽力しました。また、開国進取の立場から、公武合体、雄藩連合の統一国家を樹立することによって危機打開をしようと東奔西走しました。しかし、井伊直弼が行った安政の大獄で、弱冠二十五歳で刑場の露と消えました。彼の思想と行動には、現代から見れば限界も批判もあります。しかし、時代の制約を思えば、同じく安政の大獄で刑死した吉田松蔭と並び称される、幕末が生んだ英傑です。
その橋本左内が、満十四歳の時、『啓発録』という書物を書いています。彼の内省録であり、立志録ですが、その冒頭に「稚心を去れ」の言葉が書かれてあります。左内は、「稚心とは、おさな心と云う事にて、俗にいう「わらびきしこと」(子供じみたこと)也」と記し、この心、稚心を去らなければ一人前とは言えない、「稚心を去るべし」と決意を表明しています。その翌年、満十五歳の時、福井をあとに大坂に出て、緒方洪庵の適塾に入門し、蘭学を勉強、師の洪庵が称賛するほどの秀才ぶりを発揮しています。
皆さんはちょうど、この頃の橋本左内と同年輩です。今や中学時代は終わりを迎えました。親や周囲の人に頼ったり、甘えたりする時代は過ぎました。「稚心を去れ」、そして左内は続けて、「志を立てよ」と言っています。志とは将来にかける思いであり、「志なきものは、魂なき虫に同じ」とまで言っています。
これからは志を高く掲げ、独り立ちしなければならない。力足らざれば努力するのみ、成功におごらず、失敗にへこたれず、何事も他人のせいにしない、自分自身の足で立つ。自らの目標を自らで立て、自ら進んで勉学に取り組む。「稚心を去れ」とは、そういう人間になれということです。人間が成長するということは、体が大きくなるばかりでなく、体の成長につれて、内なる精神も一緒に大きくならなければなりません。
幸い皆さんは若い。無限の可能性を秘めています。夢を抱き、希望を掲げ、情熱を燃やし、苦しみを乗り越えて、自分の力で自分の人生を切り開いていってもらいたいと思います。
以上、皆さんの前途を祝福しつつ、所感の一端を述べ、式辞といたします。
令和七年三月十八日
東洋大学附属姫路中学校長 上田 肇