2024年2月16日(金)
第59回卒業証書授与式を挙行し、329名が巣立ちました。
卒業証書授与の様子
学校長式辞
理事長告辞
東洋大学理事の寺田信幸が告辞を述べました。
来賓祝辞・メッセージ祝電披露
ご来賓の方々から心のこもったご祝辞を賜りました。
姫路市立中学校長会会長で高丘中学校の長谷川陽一校長先生からお祝いの言葉をいただきました。
育友会長様からお祝いの言葉をいただきました。
同窓会長様からお祝いの言葉をいただきました。
在校生送辞
先輩方から学んだことを生かし、伝統を受け継いでさらに発展させていきたいとの決意を述べました。
卒業生答辞
伝統ある制服に袖を通した日から3年。創立60周年を迎え様々なことが変わっていっても私たちの高校時代の思い出はこの制服とともにあり続けるだろうと述べました。在校生には限られた時間の中でも焦らず、精一杯自分の道を切り拓いていってほしいと伝えました。
卒業生保護者代表謝辞
保護者の代表から関係者や教職員への感謝の言葉と、卒業生への期待の言葉が述べられました。
ホームルーム


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式 辞
厳しかった冬に耐え、書写山の木々が春の気配を感じて芽吹き始めた今日この頃、新型コロナウイルスやインフルエンザの感染の不安を抱えながらではありますが、ご来賓として姫路市立中学校の代表校長である姫路市立高丘中学校の長谷川校長先生を始め、本校の高等学校および中学校の育友会長様、同窓会長様、そして日々お世話になっております近隣の東坂地区、西坂地区、田井地区のそれぞれの自治会長の皆様、さらに保護者の皆様方にご列席賜り、本日、ここに東洋大学附属姫路高等学校第五十九回卒業証書授与式を挙行できますことは、大きな喜びであります。壇上からではありますが、本校教職員を代表して、御来賓いただきました皆々様に厚く御礼申し上げます。ありがとうございます。
保護者の皆様におかれましては、お子様を三年間、または六年間、今日に至るまで喜びを感じながらも様々なご苦労や葛藤をされながら見守ってこられたこととに対し、心より敬意を表しますとともに、本校の教育活動にご協力賜り、感謝申しあげます。お子様の高校卒業という人生の節目を迎えられ、本日、呼名を受けて起立されたお子様の逞しくなられた後ろ姿を見られ、保護者の皆様におかれましては、感慨も一入かと存じます。
さて、只今、卒業証書を授与いたしました五十九期生三百二十九名の皆さん、卒業おめでとう。A・B組の皆さんは中高一貫コースの五期生として六年前中学に入学して以来、他の生徒の手本となる姿を見せてくれました。皆さんは本校では私より一年先輩です。思い起こせば三年前、皆さんが本校の高等学校に入学した頃は、コロナウイルス感染症のパンデミックが起こり、入学式は制限を設けての簡素な式典で、その一年間は多くの行事を縮小しました。高校2年生になったころからは密を避けた文化祭や分散体育祭、コロナ感染の不安を抱えながらも楽しめた東北への修学旅行、夏には東洋大学での課題研究も実施し、昨年はマルタ島への海外語学研修も行うなど、少しずつ行事を広げていきました。私が同行した東北への修学旅行では、被災状況をそのまま残した震災伝承館での皆さんの真剣な表情や、旅行最後のディズニーランドでのはちきれんばかりの笑顔で楽しんでいた姿を思い出します。また、昨年高校3年最後の体育祭で見せた皆さんのあふれんばかりのエネルギーと団結力に感動を覚えたことも懐かしく思い出します。皆さんは、本校60年間の伝統の学生服やセーラー服を着た最後の学年です。その伝統をしっかり受け継ぎ、文武両道を成し遂げるべく本当によく頑張ってくれました。本来は今日の卒業式で運動部や文化部で活躍した個人やクラブを表彰したかったのですが、その表彰の多さで時間の都合もあり、昨日、表彰式を執り行いました。卒業生名簿の横に列記しましたので、ぜひ見てください。また、昨日、卒業生の記念品贈呈式で、卒業の記念品として、本校の60年の歴史をずっと見てくれていた初代の校旗を壁にかけて長く保存する額を寄贈していただいたことも皆様にご報告いたします。卒業生の皆さん、本当にありがとう。皆さんが本校で過ごしてこられた記憶とともに、校長室前の廊下でずっとこれからの本校の歴史を見てくれることでしょう。
さて、私は四年前に本校の校長に就任したときからコロナ禍でしたので、その年から卒業証書授与式では担任が卒業生の皆さん一人ひとりの名前を呼ぶようにしてきました。昨年までは飛感染防止のため返事のない授与式でしたが、此度は、皆さんの元気で気持ちのこもった返事を聞き、この三年間のつらかったことも吹き飛び、今、私は心打たれると同時に、この体育館内にみなぎる温かい思いやりとこの学び舎を巣立って新しい世界へと飛び出していこうとする皆さんの逞しい決意を感じ、今とても感激しています。
皆さんは、本校の建学の精神である「諸学の基礎は哲学にあり」のもと、「考えるを、学ぶ。」を実践されてきました。これからの未来はAIやロボット、自動運転などますます科学技術が発展し、世界中を物資や情報、ヒトの行き来がさらに多くなり、一層グローバル化の時代になります。一方で、平和が脅かされる事態になったり、異常気象や今年元日に起こった能登半島地震のような天変地異や、人災などどのような災害がいつ起こるかもわかりません。そんな中でも、本校で学んだ、自分の頭で考え、判断し、危機管理をしながら行動する、そうした自立した生き方をしていれば必ず乗り越えていくことができます。そして、世界中どこに行っても、言葉は通じなくても、井上円了先生がもとめた、人類愛を持って謙虚で誠実に努力する生き方をしてください。それは、世界万人に通じます。
ここで、皆さんの卒業にあたって、人生の先輩として三つのアドバイスを贈ります。
その一つは「命を大切にする人であれ」です。皆さんはお父さん、お母さんというご両親から命を授かりました。そのお父さん、お母さんも二人ずつのご両親からの命をうけついでいます。六〇〇年ほどさかのぼると、約105万人の命がうけつがれて今のあなた一人の命に結集しているのです。一人として欠けていれば今のあなたは存在しなかったのです。今生きていることが奇跡なのです。そしてその命を維持するために我々は多くの植物や動物の命を食事としていただいて、生かされています。そのかけがえのない命を大切に使っていただきたい。たった一人しかいない自分を、たった一度しかない人生を、輝かせて生きてください。予測不可能な、変化の大きい時代だからこそ活躍できるチャンスがいっぱいあります。どうか、命を大切にして生きた証を残す人生を送ってください。
二つ目のアドバイスは「無理と言わず、挑戦し続ける根性を持て」です。人生においていろんな人や出来事と出会うと思います。ユーグレナ社長の出雲充氏は、今は40代ですが、大学1年のとき初めての海外旅行がバングラデシュで、そこで大人も子供も栄養失調になっている姿にショックを受け、「栄養価の高いものをバングラデシュの人々に食べさせたい」との思いを抱いて帰国すると、大学の授業の顕微鏡観察でミドリムシ、つまりユーグレナに出会うのです。このミドリムシは植物と動物の栄養素を両方持ち、人間が生活するのに必要な59種類の栄養素をすべて持っていることを知り、後は一心不乱、何回失敗しても、恥をかいても、成果を出すまで寝ずに研究を続け、ついに食用屋外大量培養に成功し、ミドリムシの栄養素を含んだ食品を作ました。今はマレーシアにミドリムシからバイオジェット燃料を作る工場も建設しています。ミドリムシは昔から多くの人が知っていますし、栄養価の高い食品を作りたいと多くの人が思っていますが、出雲さんだけがなぜできたのでしょうか。それは、無理と言わず、絶対にあきらめない、誰よりも強い思いがあったからに他なりません。頭が良い、記憶力が優れているとかではなく、誰もが持ち合わせているが、その根性とユーグレナに対する愛情が誰よりも強かったのだと思います。自分の決めた目標や夢にチャレンジしてください。他人と比較したりせず、「無理」と投げ出さず、絶対にあきらめずに挑戦し続けてください。きっと、目標に到達できるでしょう。
三つ目のアドバイスは「逆境を楽しめ」です。これからの皆さんの人生の中で、つらいこと、苦しいこと等様々な逆境が訪れるでしょう。鳥は向かい風を受けて空高く上昇します。苦難は自らの隠れた能力の開花と魂を磨く絶好のチャンスです。逆境の時こそ天に試されている時ととらえ、それを乗り越えたところに自らの成長とさらなる自信が生まれます。つらくなった時、詩人である坂村真民が作った「七字のうた」という詩の一節を紹介しますので、思い出してください。
「よわねをはくな くよくよするな なきごというな うしろをむくな」苦しい時も、この詩を心にとめて奮起してください。
それでは、卒業生の皆さん、いよいよ、お別れです。皆さんが三年間見慣れた学び舎から臨む書写の山々の四季折々の変化に思いを寄せ、折に触れて、母校のことを思い出してください。そして、もしつらくて負けそうなとき、母校を、また本校の先生に会いに来てください。きっと、皆さんの心の癒しの場になると思います。皆さんが、激動の二十一世紀を逞しく生き抜かれることを切望するとともに、皆さんの前途に幸多きことを祈念しまして、式辞といたします。
令和六年二月十六日
東洋大学附属姫路高等学校長 大森 茂樹