For Alumni -私の哲学- すぎ省水産株式会社 会長 杉原 省

私の哲学
失敗を恐れず、日々探求。

水産業で能登を元気にしたい

すぎ省水産株式会社 会長 杉原 省

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Profile
すぎはら・しょう/経営学部商学科 1973年卒業
1985年、すぎ省水産株式会社を設立。2015年には先代が戦後まもなく創業した海鮮問屋を前身とする株式会社かねしげを合併。地域が誇る能登ふぐ・能登なまこなどの普及にも積極的に取り組み、能登の海の恵みを全国に届けている。

古くから能登半島の中心部として栄えた石川県七尾市。「令和6年能登半島地震」によって甚大な被害を受けたこの地で、水産業を守り続ける杉原省さん。今もなお多くの地域で復旧作業が続けられる中、自ら起業した「すぎ省水産株式会社」の会長として最前線に立ち、挑戦し続けています。

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一念発起して起業へ

大学時代の思い出、起業された経緯を教えてください。

水産業を営む家庭で生まれ育ったこともあり、子どもの頃から家業を継ぐものだと思っていました。しかし高校時代に少林寺拳法に憧れ、部活動で鍛錬できる東洋大学へ。仲間と切磋琢磨し、少林寺拳法に鍛えられた4年間が、私のアイデンティティを作り上げました。卒業後は商社で3年間勤務。その後、半年ほどアフリカやヨーロッパを一人で旅していました。多くの出会いがありましたが、言葉が通じない異国の地で過ごした経験が、私を精神的に強くしてくれましたね。帰国後は金沢市内の水産会社で1年間修業し、家業に入りました。起業するきっかけとなったのは、七尾市に地方公設市場が開設されたことです。それまで先代は、地元の漁師が獲った魚を東京の築地市場に卸していましたが、市内に市場ができたことで、仲卸業者が求められたのです。先代に負けたくない、もっと業務を拡大していきたいという気持ちから、私は思い切って家業とは違う道を選ぶ決断をしました。創業当初はさまざまな苦労もありましたが、仲卸業者として以前はなかった和倉温泉の旅館や飲食店などの卸先を開拓、2015年には先代が営む会社も合併し、今に至ります。

能登ふぐ・能登なまこ・甘エビなど、地元の恵みを活かした加工品の商品開発にも積極的に取り組んでおられますね。

2007年に発生した「能登半島地震」を機に、県が中小企業の商品開発などを支援する「活性化ファンド」が創設されました。私も地元の活性化は常に考えていましたので、ファンドを活用して、まずは地域を代表する伝統食材である「能登なまこ」の消費拡大に向けて「能登なまこ加工協同組合」を立ち上げました。全国なまこサミットなど、その魅力を広く発信すべく、さまざまな取り組みを行っています。さらに、2011年に能登の里山里海が「世界農業遺産」に認定されたことを機に結成された、「能登ふぐ事業協同組合」の代表理事に就任。それまで、地元ではあまり食べる習慣がなかったのですが、数多くのイベントを行い、「能登ふぐ」のブランド化に努めました。おかげさまで、天然ふぐの漁獲量は石川県が全国2位となっています。加工品も「能登ふぐ唐揚げ」や「ふぐの花削り」、なまこコラーゲンを配合した「能登なまこうどん」など、さまざまな商品が生まれました。アイデアが浮かぶと、すぐにメモできるよう、枕元にもメモ帳を置いています。もちろん失敗もありますが、だからこそ向上心が生まれる。失敗から学ぶことが大切です。これからも新たな商品開発には積極的にチャレンジしていきたいですね。



大学の皆さんの支援に感謝しています

2024年元日に発生した「能登半島地震」では多大な被害を受けられたとお聞きしております。現在の状況はいかがでしょうか。

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昨年の地震・津波によって自宅は大規模半壊となり、アパート暮らしを余儀なくされましたが、迷うことなくすぐに建て替えを決断しました。少しでも早く地域が元気になるよう、復興のシンボルとしたい気持ちもありましたね。従業員は全員無事で安心しましたが、工場の設備も浸水によって破損し、生け簀のなまこも津波ですべて流されてしまいました。取引先の皆さんも、震災を機に廃業する方や避難先から戻れない方が多く、仕入れ・販売共に減少しています。昨年9月の集中豪雨がさらに追い打ちをかけましたね。そんな中、大学関係の多くの皆さんに支援していただいたことには本当に感謝しています。東洋大学の学生・教職員の皆さんも復興支援ボランティアに何度も来てくださっているそうで、うれしい限りです。
昨年、私は73歳にしてピアノを習い始め、今では人前で弾けるようになりました。東洋大学はリカレント教育に力を入れているそうですが、皆さんも機会があれば、やりたいことに挑戦してほしいですね。一生懸命何かに取り組んでいれば、必ず誰かが見てくれている。そして道は開けるはずです。私も、従業員や漁業者を守るため、そして地域復興のため、これからも歩みを止めず頑張っていきます。まだまだ復興の道半ばですが、ぜひ能登を応援してください。