For Alumni 37歳まで第一線で活躍。原点は、アイスホッケーへの想い。アイススケート部ホッケー部門監督 鈴木 貴人
TOYO UNIVERSITY ICE HOCKEY CLUB
アイススケート部ホッケー部門 インタビュー 鈴木 貴人監督
37歳まで第一線で活躍。 原点は、アイスホッケーへの想い。
東洋大学在籍時にインカレ3連覇を達成。世界選手権に14度出場するなど、輝かしい実績を誇るアイスホッケー界のレジェンド・鈴木貴人監督。アイスホッケー人生、そして指導者としての想いに迫ります。
Profile
すずき・たかひと/社会学部社会学科 1998年卒業
北海道出身。アイスホッケー日本代表として15年間活動し、歴代最多となる82試合に出場、世界選手権に14度の出場を誇るアイスホッケー界のレジェンド的存在。現在は、母校・東洋大学アイススケート部ホッケー部門の監督として学生の指導に当たる。2023年10月に公益財団法人日本アイスホッケー連盟の強化本部長に就任。アイスホッケー元日本代表主将、元日本代表監督。
目指すは全日本選手権決勝の舞台
オリンピック直前の怪我が
現役生活の大きな糧に
女子日本代表が4大会連続5度目のオリンピック出場を決めました。日本アイスホッケー連盟強化本部長として、意気込みを聞かせてください。
前回大会までチームを引っ張ってくれていた選手数名が引退しチームは世代交代が進みましたが、予選は本当にいい戦いをしてくれました。メダル獲得にはさらなるレベルアップが求められますが、若い力の成長に期待したいですね。
監督ご自身は、東洋大学在籍時に選手として日本代表に選ばれました。怪我で出場は叶いませんでしたが、オリンピックへの想いを聞かせてください。
長野オリンピックの開催は私が大学4年生のときでしたが、大学に入学した時点では日本代表を目指すなど、遠く及ばないレベルの選手でした。高校はアイスホッケーの名門校でしたが、代表入りを狙える選手は実業団へ進むというのが一般的で、大学へ進学した当時の私にとっては、まさに夢の舞台。現実的な目標として意識するようになったのは、初めて日本代表に選出された大学3年生のときですね。
直前の怪我でオリンピックの舞台に立つことはできませんでしたが、今思えばこの悔しい経験が現役時代の大きな糧になったと思います。日本代表として15年間活動し、現役を退く37歳まで世界選手権の舞台に立つことができました。これは子どもの頃に思い描いた夢をはるかに超えるキャリアです。その原動力となったのが、オリンピックの舞台に立ちたいという想い。長野オリンピックに出場して満足していたら、選手寿命はもっと短かったかもしれません。
フィジカルの強さとスピードが求められる競技で37歳まで第一線で活躍されたのはすごいですね。
トレーナーをはじめ、支えてくださった周囲の皆さんに感謝しています。生まれ育った北海道の苫小牧は、学校のグラウンドにリンクがあるほどスケートやアイスホッケーが身近でした。スケート靴を履いて公園で遊んでいた幼少期から現役引退まで、アイスホッケーを辞めようと思ったことは一度もありません。最後まで楽しんでプレーできましたし、純粋にアイスホッケーが大好きなんです。そう思える競技に出会えたことは本当に幸せなことだと改めて感じますね。
努力を重ねた成功体験が
選手一人ひとりの将来に活きる
母校である東洋大学アイススケート部ホッケー部門の監督として、選手にどういった指導をされていますか。
教育的観点で言えば、スポーツに打ち込むことで人として成長してほしいということです。卒業後の人生はさまざまです。競技を続ける者もいれば、そうではない者もいますが、たとえ大学で競技人生を終えたとしても、ここで得たものを次のステージで活かしてほしいですね。プロを目指すだけがすべてではありません。選手とは1年生の段階から面談し、卒業後を見据えた指導を行っています。
チームとしては、関東選手権、関東リーグ戦、インカレの主要3大会で優勝することを目標にしています。さらに、トップリーグのプロチームも参加する全日本選手権でトップ4に入ることを目指して練習を積み重ねてきましたが、昨年は2年ぶりに関東リーグ戦で優勝し、大きな目標であった全日本選手権トップ4入りも初めて成し遂げることができました。大学は決して日本代表を育成する場ではありませんが、プロに勝つために努力を積み重ねたプロセス、そして目標を達成することができたかけがえのない成功体験は、選手一人ひとりの将来に必ず活きると思っています。
指導者として、現役時代の経験が活かされていることはありますか。
大学時代に海外留学した際、コーチがすごく褒めてくれたことを覚えています。当時の日本とは選手に対するアプローチが違いました。もちろん日本の良さもありますが、違う世界を見たことは指導者として大きな財産になったと思います。大切にしているのは、選手の長所を伸ばしてあげること。個々の足りない部分を指導しながら、長所をいかに引き出せるかを常に考えています。
私は日本代表でキャプテンや監督を務めたことから、順風満帆なエリート街道を進んできたと思われることがありますが、決してそうではありません。高校1年生のときは一度も試合に出場できませんでした。長野オリンピックも怪我のために、その舞台に立つことは叶いませんでした。悔しさを胸にいくつもの壁を乗り越えたことで成長したと思いますし、それらの経験は指導者になった今、活かされていると思います。
最後にアイスホッケーの魅力、読者へのメッセージをお願いします。
スポーツの魅力は非現実感を楽しめること。アイスホッケーは陸上を走るよりも早いスピードで選手同士がぶつかり合います。コンタクトの激しさ、フィジカル、スピード感は映像では100%は伝わりません。ぜひ、会場まで足を運んで直接体感していただきたいですね。9月には関東大学アイスホッケーリーグ戦が始まります。ここで2年連続12度目の優勝を果たし、その先の全日本選手権では決勝の舞台に立つことを目標にしています。卒業生の皆さんの応援は、選手たちにとって大きな力になります。後輩たちの輝く姿を、ぜひ応援してください。