Academics & Global 学長×2024年度TGLゴールド認定学生対談

東洋大学で培った「国際感覚」―TGL プログラムと私たち
SGU 採択を機に2016年度にスタートしたTGLプログラム(以下TGL)は、23年度までに517名のTGLゴールド認定者を輩出してきました。
ファシリテーターとして矢口悦子学長を迎え、2024年度ゴールドに認定された4年生5名それぞれの4年間の歩みについて、語ってもらいました。
参加者紹介
瀬野 晴仁 (セノ ハルト)
経済学部第1部総合政策学科
主な参加プログラム
語学セミナー(オーストラリア・ディーキン大学)
Diversity Voyage(マレーシア、ラオスなど)

黄 泰碩 (ファン テソ)
経営学部第2部経営学科
主な参加プログラム
協定校語学留学(カナダ・セントメアリーズ大学)
語学セミナー(アイルランド・ダブリンシティ大学)

長谷部 桃香 (ハセベ モモカ)
国際観光学部国際観光学科
主な参加プログラム
長期留学(台湾・文藻外語大学)
語学セミナー(中国・北京語言大学)

福井 凪桜 (フクイ ナギサ)
社会学部第1部国際社会学科
主な参加プログラム
海外インターンシップボランティア(オーストラリア)
協定校等主催短期プログラム(韓国外国語大学)

金谷 梨未 (カナヤ リミ)
国際学部グローバル・イノベーション学科
主な参加プログラム
長期留学(韓民・漢陽大学)
オンラインワシントンDC研修

矢口悦子学長
ファシリテーター
2020年より東洋大学学長

- 01 TGL ゴールド認定者それぞれの背景
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学長: 皆さんこんにちは。学長の矢口です。今日は本当によくおいでくださいました。短い時間ですがよろしくお願いいたします。まず、皆さんの自己紹介をお願いいたします。
瀬野: 私はこれまで、TGL を1つの軸として活動してきました。最初に参加したのが、コロナ禍のためオンライン開催でしたが、2年次のDiversity Voyage という海外研修でした。その時にラオスの学生とチームを組んで色々会話して、世界ってこんなに広いんだなと国際交流の楽しさを知るきっかけになりました。そこから、TGLに力を入れてTGポイントを貯めたり留学をしたりといった行動に繋がりました。
長谷部: 私は1年の春学期にオンラインで中国の語学セミナーに参加し、2年の秋学期からは1年間台湾に長期留学し、英語を学びつつ中国語習得にも力を入れました。また、現地の日本語学科で日本語を勉強している学生とも交流しました。 帰国後は、国際教育センターのプログラムに参加し、語学を活かして交換留学生のサポートを行いました。
黄: 僕は日本生まれ日本育ちですが、国籍は韓国です。大学入学時は、「国際」「グローバル」なんて言葉を想像すらせず、自分はずっと日本に住むんだと漠然と思っていました。入学後にアイルランドやカナダに留学し、そこでしか得られない経験を通して、将来的には海外に住んで仕事をしてみたいという考えに変わりました。
福井: 私は1年次から応援指導部でチアをやっています。実は入学前からこのTGLゴールドを絶対に早く取ろうと思っていたので、とても大変ではありましたが2年次から部活と並行してオンラインプログラムや長期インターンシップなどに取り組みました。国際的な力を身につけながら、学業と部活を両立することを目指しました。
金谷: 私は、グローバル・イノベーション学科4年次で、現在は大学院の授業も履修しています。この学科への入学が自分の人生の転機になりました。留学生の割合が多く、授業がすべて英語でした。最初は英語が話せず消極的だったんですが、留学生の友達のおかげで少しずつ成長して、今では英語ができるようになりました。2年前、韓国に1年間交換留学し、いろんな国の学生と友達になりました。 - 02 TGL プログラムとの出会い
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学長: 福井さんは入学前からTGL プログラムを知っていたとのことですが、他の皆さんは東洋大学を受験する前に、東洋大学の推進する国際化、具体的にはSGU やTGL プログラムについてご存じでしたか?知らなかったとしたら、どのようにTGL プログラムと出会いましたか。
瀬野: 知らなかったです。1年次で最初に履修した「異文化理解概論」という授業で、TGLゴールドを目指している先輩の話を聞いて、そんなプログラムがあるんだと知ったのが最初だったと思います。
長谷部: 私も入学後に知りました。入学後のオリエンテーションでTGL の説明があり、どうせならゴールドを目指したら色んなチャレンジができるし面白そうと思い、少しずつ意識しました。
黄: 僕はコロナ禍の2020年入学で、外にあまり出られない時期に送られてきた資料を見てTGL を知りました。オンライン開催のTGL キャンプなどは家からでも参加できると思いました。大学に入ったら何かを成し遂げたいと思っていたので、地道にオンラインでできることから取り組みました。
学長: コロナ真っ只中、オンラインの時期だったのですね。そこで目標を決めたと。
黄: はい。少なくとも2年次までにはTGL シルバーになろうと思っていました。その時は海外渡航もすぐできるだろうと希望を持っていたんですが、結局1年間休学をして海外渡航が解禁されるのを待ち、2022年にアイルランドにようやく行くことができました。これが「行動としてのグローバル化」みたいものが始まった時だったかなと思っています。
福井: 私は入学前に、ウェブサイトでTGL ゴールドになった先輩たちのインタビュー記事を見て、自分の専攻の社会学だけじゃなく他の領域も学べる東洋大学だからこそ挑戦してみようと思いました。部活も大変でしたが、オンラインも活用しながら頑張りました。コロナ禍だったことも大きくて。自分から動かないと何も始まらないと高校3年生の時に感じたんです。勉強も自分から時間を作るとか、積極的にしないと前に進まないもどかしさがあったので、大学は頑張りたいなと思いました。
金谷: 私は何も知らず入学して、コロナ禍だったのでオンラインでできることはないかと初めて参加したのがバングラデシュの大学とのプログラムで、興味がある韓国以外にも、発展途上国の文化や社会問題を学んでみようと思いました。このプログラムへの参加がきっかけで、バングラデシュの方と友達になって、2~3年友達として交流できてありがたいです。
学長: 皆さんは、コロナ禍でもオンラインを活用して今できることを手繰り寄せた、その中でTGL プログラムとも出会ったことが素晴らしいと思います。コロナが一段落して実渡航ができるようになったら留学等を経験し、自ら道を切り拓いていったのですね。 - 03 TGL プログラムが変えた自分
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学長: 瀬野さんは、最初にDiversity Voyageに参加したことが転機だと話してくれましたが、何がそんな大きな転機になったのでしょう。
瀬野: 仲間との出会いというのが一番大きかったと思います。本音で意見をぶつけ合って、時には喧嘩することもあったんですけど、お互いなんでも話せる関係、いい意味でのライバル関係にもなって、その仲間と卒業まで切磋琢磨できたと思います。
学長: Diversity Voyage に参加して得られる仲間って、日常的に得られる仲間と何が違うのでしょうか。
瀬野: Voyage に参加した仲間たちは、国際交流への意欲とか熱量が違う気がします。最終日の発表に向けて一緒に準備する過程で、自分を隠していると何も話せなくなるから積極的に意見を言うようになり、そこから仲間として認め合えるようになりました。Voyage の後は、TG ポイントを貯めるのが趣味になりました。イベントは可能な限り絶対参加すると決めて、結果的に今150ポイントぐらいです。
黄: ポイントは自分もそれなりに取っていると思っていたんですが、そこまでないです。お話を聞いて驚きました。
瀬野: ポイ活みたいな感じですね(笑)。自分の成果が数字に現れてわかるのがいいです。また毎回新しい出会いがあって交流が広がって、仲間が増えたりして。成果が数字として見えたことは、大きな意味のあったことなのかなと思います。
学長: 長谷部さんは、何か大きな転機と感じるようなことはありましたか?
長谷部: 私は台湾に1年間留学して、台湾人3人とルームシェアしました。私と違う価値観の人に出会い、「台湾から日本はこういう見られ方をしてるんだな」と感じました。英語と日本語だけでは得られない情報を、中国語を通して知ることができたことで、自分の価値観や考え方が変わりました。このようにTGL や留学を通じて、出会いが広がりました。
また、私は完璧主義な性格ですが、台湾や中国の方はあまり細かいことは気にせず、「まあいいでしょう」という方が多いんです。それで、100%を目指さなくても60~70%でもいいんだ、完璧な人なんていないんだというのを、受け容れられるようになりました。そこが、自分の一番変わった点です。
学長: 他国の人をきちんと理解することで、逆に自分を外側から見ることができたのですね。いい経験をされていますね。仲間の存在が、自分を知るきっかけを作ってくれているのですね。
黄: 僕もカナダやアイルランドでできた友人は、今でも連絡を取ったり、切磋琢磨しあったりする関係です。僕も完璧主義な性格でしたが、留学先で周りの人たちを見ると、よくも悪くも適当でいいんだなと思いました。一番驚いたのが、車が止まってくれた時に、アジア人の性(さが) で、すみませんって頭下げながら小走りをしたんです。すると友達が隣で爆笑してるんです。「なんで走ってんの?ゆっくり歩けるのは僕たちの権利なんだよ」って言われた時に、その議論が正しいか正しくないかということ以上に、そういう考え方もあるんだと気がついて、かっこよく言うと、もう世界に出てるんだなって感じました。
金谷: 私は韓国に留学して、自分の将来への考え方がガラリと変わりました。ヨーロッパやアメリカからの留学生がいる中で1年間寮生活をしましたが、私の友達の多くが博士課程や修士課程で学ぶなどさらなる高等教育を目指す方が多かったんです。私はいろんな友達に出会って、自分の興味や自分自身についてもっと考えないといけないと思うようになりました。 - 04 卒業後の未来
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学長: TGL ゴールドを取得した皆さんは、将来この体験をどう活かしていきたいとお考えですか?
瀬野: 卒業後は一般企業で働く予定です。私はTGL プログラムの中で、自分次第で世界は変えられると気づくことができました。将来は人のやりたいことを後押しできるような仕事につきたいと思い、高校生の就職支援をする会社に就職することにしました。
長谷部: 卒業後は航空関係の公務員になりますが、世界に出ていく機会も多い職種なので、これまで培った語学力と国際感覚を存分に活かせるのではと感じています。TGL プログラムを通じて養った「自分で高い目標を設定し学び続けること」は、卒業して社会人になっても、大切にしていきたいと思います。
黄: 自分は主体的に今後の人生を決めていきたいと思っています。今回幸いにもホテルから内定をいただいたんですが、入社時期を選ぶことができたので、まずは卒業後4月からイタリア語を学ぶために、3カ月ほどイタリアに行くことに決めました。2カ国の留学を通じて一番聞かれた質問が"What do you think?" だったので、「自分がどう思うか」をこれからも突き詰めていきたいと思っています。
福井: 今、内定先のベンチャー企業の新規事業の開発に関わらせていただいています。将来は地元福島県で日本をより世界に広げていくための事業に、責任を持って携わりたいと思っています。現在取り組んでいることは、英語や国際的な何かに直接繋がるものではないですが、今自分にできることをして、いずれ海外で自分の英語力や国際感覚が活かせたらと思っています。
金谷: 私は、進学して日韓関係について学びを深め、修士の次に博士号を取りたいと考えています。難しいかもしれませんが、将来的には教授となることを目指し、日本と韓国の架け橋になれたらと思っています。
学長: 皆さんは卒業してそれぞれの道へ進まれるわけですが、歴代のゴールド認定者の方々が再び集まる機会、例えばホームカミングデーなどに合わせて、「ゴールドの集い」などができたらいいですね。
ゴールドを取得された皆さんは、哲学的な表現になってしまいますが、「とても特別な方たちではあるけれども、特別感はない」と感じます。皆さんそれぞれすごく頑張られて優秀だし、私たちの大学が誇りとする、卒業式で表彰されるような方々なのですが、お話を伺っていると、学内の他の学生と変わらないようにも見える。もしかしたら、他の学生も皆さんのように、ちょっと行動を起こすことで、何か見え方が変わるのかもしれないですね。
今日は、皆さんの建設的な言葉をたくさん聞くことができて、「自分で考えて行動することで新たな価値を見出す力」といったものを感じて、もしかしたらこれがゴールドに認定される方の特徴なのかなと思いました。今後皆さんの後輩学生にも、もっとTGL プログラムを幅広く経験してもらえたらと思いました。本当にありがとうございました。