Academics & Global 2007年度 第1期 機関別認証評価
東洋大学の理念に基づいた大学改革、改善の仕組み
大学は本来、大学自身の手で継続的に改善していく活動を行ってきました。東洋大学においても、自己の手で自らの長所や問題点を点検し、改善に努める活動を続けてきました。また、それに加えて日本のすべての大学は少なくとも7年に1 度、国の認証する機関から評価を受けなければなりません。
東洋大学では大学基準協会(評価機関)に大学評価(認証評価)を申請し、2008年3月に評価結果の通知を受けました。
『評価の結果、貴大学は本協会の大学基準に適合していると認定する。』
しかし、そこには改善すべき点も指摘されています。
東洋大学では今後、その改善すべき事項に対し真摯に向き合い、大学を良くしていくために取り組み続ける強い覚悟のもとにこれからも活動していきます。提出調書/評価結果
ここでは東洋大学の活動をより知っていただくため、評価結果だけでなく、申請にあたり作成した調書を解説とともに公開します。
- 評価結果
-
東洋大学は、2007年度(財)大学基準協会による大学評価(認証評価)を受審し、「本協会の大学基準に適合している」との認定を受けました。
認証評価結果
評価の結果、貴大学は本協会の大学基準に適合していると認定する。認定の期間は2015(平成27)年3月31日までとする。
認証評価結果に対する今後の対応について
財団法人大学基準協会による「大学評価(認証評価)」結果を受けて
財団法人大学基準協会による「大学評価(認証評価)」結果が2008年3月24日付にて公表されました。この評価結果は、2006年5月時点での東洋大学の活動記録を基として作成した東洋大学による自己点検・評価報告書に基づき、大学基準協会が第三者の目として、東洋大学の大学としてのすべての領域にわたる活動について、評価を行った結果であります。
幸いなことに、評価結果は、「貴大学は本協会の大学基準に適合していると認定する。」というものでありました。また、その総評においては、東洋大学が総合大学としての機能を果たしていること、学内各学部等の計画、現状、課題、結果を発表し合う全学プレゼンテーションの取組みに対しては高い評価を得ることができました。しかし、今後の活動においては、建学の理念等を学生へ直接的に伝えるような働きかけにおいて、また「授業評価アンケート」など学生の生の声を聞きとる体制の整備において、なお努力をすべき点が多く残されていることが指摘されていました。
建学の理念の伝達においては、次のような理念と目標を掲げているのですが、直接学生諸君へ伝える機会は、限られたものであったことが反省されます。目に触れ、耳に触れる機会を工夫していきたいと考えるものです。ちなみに、理念と目標は次のように述べることが出来ます。
東洋大学の理念:「諸学の基礎は哲学にあり」の理念を基に「社会に役立つ智を愛する精神」を継承する東洋大学の5つの目標:
- 独立自活の精神に富み、知徳兼全な能力を備える人材を輩出し、もって地球社会の発展に寄与する
- 総合大学の利点を活かす、良質の教育を行う
- 高水準、かつ特色のある研究拠点となる
- 社会の要請に創造的に応える
- 大学構成員が大学の使命を自覚し、自らの責任を果たし協力することにより、継続的な改革・発展を可能とする大学運営を行う
また、「大学評価(認証評価)」の結果において、改善を求めることとして、「助言」には、(1)シラバスの内容への指摘、FD活動の不十分さへの指摘、(2)入学定員比率、収容定員比率等に関する指摘、(3)教員の年齢構成に関する指摘、教員数と学生数との割合に関する指摘がなされています。このような改善のための「助言」については、真摯な対応を取ることが大学の社会的な責任の上からも重要であると考えていることをまず表明しておかなければなりません。シラバスの問題、FDの問題については、すでにそれぞれ検討を開始しているところではありますが、「授業評価アンケート」の結果への対応などを含め、早急に東洋大学方式を確定していかなければなりません。
今後の各種の改革の実行には、いわゆるPDCAサイクルを確実にまわしていくことが必要となりますが、学内において定着してきた全学プレゼンテーションの機会を有効に利用しながら、自己点検・評価の実施、改革の進行管理を実質化していくことが必要であると考えるものです。
東洋大学は、2012年に創立125周年を迎えます。今回の認定の期間は2015年3月31日までとされていますが、創立 125周年を一つの目標として、東洋大学を一段とレベルの高い大学へステップアップさせていく良い機会として、今回の「大学評価(認証評価)」の結果への対応を進めていきたいと考えています。
2008年3月24日
東洋大学
東洋大学の取り組みの一部
以下では、自己点検・評価の結果が明らかになったことを、ごく一部ではありますが、紹介します。
- 東洋大学の理念
-
東洋大学は「諸学の基礎は哲学にあり」の理念や井上円了の目指した「知徳兼全な人材の養成」「独立自活の精神に基づく実力主義の教育」を継承し、学則第2条に定める「本学は、創立者井上円了博士の建学の精神に基づき、東西学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥を究めると共に、人格の陶冶と情操の涵養とに務め、国家及び世界の文化向上に貢献しうる有為な人材を養成すること」を目的としている。
そして、東洋大学の教育理念を現在の社会において具現化するために、5つの目標を設定し、活動している。
- 目標1:独立自活の精神に富み、知徳兼全な能力を備える人材を輩出し、もって地球社会の発展に寄与する
- 目標2:総合大学の利点を活かす、良質の教育を行う
- 目標3:高水準、かつ特色ある研究拠点となる
- 目標4:社会の要請に創造的に応える
- 目標5:大学構成員が大学の使命を自覚し、自らの責任を果たし協力することにより、継続的な改革・発展を可能とする大学運営を行う
(点検・評価報告書「第 I 章」より)
以下のWebサイトもご覧ください。
※2021年4月より「井上円了哲学センター」に名称が変わりました。
- 社会の変化に対応する東洋大学
-
東洋大学は創設以来120年に及ぶ歴史を持つ大学であるが、創設者の建学の精神を継承しながらも、それぞれの時代の社会的要請を受けて、規模も内容も大きく発展して来ている。学部の増設、多キャンパス化の進行に伴う学生数、教職員数の増大を実現しているのであるが、このような量的拡大がもたらしてきた質的変化に対しても十分な思慮を働かせていくことが必要となっている。
また、社会の大学教育への期待は、平成18年3月の新規の高等学校卒業生の大学への進学希望は57.4パーセント、短大への進学希望は7.4パーセントとなり合わせると64.8パーセントの高い割合で進学を希望する状況となって現れている。このような状況は、18歳人口の大学・短期大学への進学率が 53.6パーセントという数字として反映され、同年齢の半分以上が大学あるいは短期大学に進学する時代となっている。すなわち大学教育はきわめて大衆化されてきていると同時に、さらに留学生を迎えて国際化している。
東洋大学の経験してきている前述の質的変化は、大学への社会からの期待の量的変化に起因するものでもあるが、国際的な役割の増大等その新たな要請への対応においても、さらに変化していかなければならない宿命を持つものといえる。このような、継続する変化への期待に備えるべく、東洋大学では組織的取組みとして、「教育研究に関する評価・改善・企画委員会」の設置、「全学プレゼンテーション大会」の定着化、さらに法人組織を含む組織として「大学評価統括本部」を設置する等体制を整えている。今回の本学に対する認証評価の結果については、真摯に受け止め、不断の自己点検・評価活動と自らの改革に備えていくべきことと考えている。
(点検・評価報告書「はじめに」より)
- 東洋大学が評価を実施した目的は?
-
東洋大学の理念、目的、教育目標等について、全教職員が改めて議論し理解を深めること
日常の教育研究活動は多忙であり、理念や目的といったことを忘れがちになる。また、これらはその時代に則して読まれるべきものでもある。従って、東洋大学の現状を検証するうえでも、改めて理念、目的、教育目標とは何かを検討するためのツールとすることを重要な目的とした。
現状を明確に認識すること
問題点や長所を把握するためには、現状が理念や目的に基づいて検討されるべきである。 従って、現状がどうなっているかを検証することの重要性は極めて大きいのである。我々はこの作業を怠ることなく、実際の活動を見つめ直すことを行った。
具体的な改善策を自律的に設定することを通じて明確な目標を持つこと
だが、いくら現状を把握してもそこで終ってしまっては「現状と課題」で終ってしまう。この自己点検・評価報告書では現状の記述に止まることなく、我々が認識した現状を東洋大学の理念、目的、教育目標に即して検証し、問題点に対する改善方策、長所をより伸張する方策を具体的に明らかにする作業を行った。
アカウンタビリティー
大学の自律的な改革、改善とその状況の説明責任は、一対で語られるべきものである。東洋大学は全ての関係者に対して、東洋大学の教育研究の質を保証するのは何よりも我々自身であることを改めて認識し、広く社会に対して東洋大学の質を保証していくとともに、その営為を広く社会に対して公表していくという姿勢で点検・評価作業を行った。そのため、本報告書は学外者の方が読まれても内容を理解できるように配慮している。
(点検・評価報告書「はじめに」より)
- 自己点検・評価を活かした改善
-
東洋大学では、2006年度に行った自己点検・評価活動の結果を、既に具体的な改善に繋げる取り組みを行っています。次にその一例をお見せします。
例1)点検・評価報告書の記述 終章 2.学士課程の教育内容・方法についてより
各学部がそれぞれ授業評価アンケートを導入し授業内容、運営の検証を行うツールは揃っている。しかし、そのアンケート結果を活用する段階までには至っていない学部が多い。
これは大学としてファカルティーディベロップメント(FD)に力を入れてこなかったことを表している。各学部・学科や個々の教員任せで、大学という組織としての取り組みが希薄であった。現在、東洋大学では経済学部において「教員総合評価」という取組みを始めており、学内におけるリーディングケースとなるよう大学としても予算的に支援しており、これらの経験を踏まえて授業評価アンケートシステムを含めた、FD活動に力を入れていくべく体制を整え、平成19年度から本格的に活動を開始する。
(点検・評価報告書「終章」P.ⅱより)
改善後
これまでの各学部等での取り組み実績を踏まえ、2007年4月より、「東洋大学FD委員会」を設置し、2008年12月に FD推進センター が開設されました。FD推進センターは、FD推進教会の下に4部会(研修部会、大学部会、授業改善対策部会、編集部会)を組織し、FDに関する共通理解を得るための全学的な活動を展開しております。
以下のWebサイトもご覧ください。
※2017年4月より「高等教育推進センター」に名称が変わりました。
例2)点検・評価報告書の記述 3 学士課程の教育内容・方法等 法学部より
実際のところは講義内容や自己の興味よりも時間割の組み立てを優先に履修科目を決定するなど、学生側にカリキュラム改訂の趣旨が十分には伝わっていないと思われる事例も散見される。この点について、法学部としては科目の体系性を理解した上での履修を促すべく、従来から『履修要覧』には履修モデルを記載し、将来の目標とそのために履修が望まれる科目を一覧にして記載してきた。また、学生に法学を体系的に学ぶ意義について理解してもらうため、平成19年度入学生の『履修要覧』に法学の科目体系図を載せることにしている。
(点検・評価報告書P.151 より)
改善後
この自己点検・評価の結果をもとに、現在では右のような法学の科目体系図を実際に『履修要覧』に掲載し、学生の皆さんが適切な科目選択ができるように配慮しました。
このように、東洋大学における改善の取り組みは既にいたるところで具体的に行われています。