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教員が語る大学院の魅力(日本文学文化専攻 木村一 教授)

19世紀の日本語を調べるということ

 

Q.教員としてご自身の専門分野を踏まえ、「研究者として研究」することの意味とは?

日本語学、おもに19世紀の辞書,会話書,文法書などといった日本語について研究を行った国内外の資料(日本語研究資料)を扱って調査を進めています。来日した外国人をはじめ,海外でも関心の高かった開国前後の日本のことばがどのようなものであったのか、前代と次代の資料も扱い,検討することになります。これらの資料からは、当時の日本語をはじめ,さまざまなことが読み取れます。

そのために、資料や調査から得られた情報と考察をこれまでの研究の中に位置づけ、これからの研究に役立てていけるのかを意識しつつ、既存の見解や解釈を超えた結論を導き出すことを目指して進めています。

 

Q.教員としてご自身が、研究者になった経緯をご紹介ください。

関心のあることを調べるということが好きであり、あまり苦になりません。むしろ思いついたり気になったりしたことをそのままにしておくことが落ち着きません。また,気長に取り組めるということもあるかもしれません。例えば、辞書を最初から最後まで読むことはもとより、すべて入力することすらあります。研究者として必要とされるいくつかの要素が、たまたま合致したのだと思います。

 

Q.教員としてご自身のご専門分野について、現在までにどんなテーマを研究されているのかご紹介ください。

19世紀の日本語が変化しながら、いかに現代につながっているのか、それ以前の日本語からの影響もあわせて、研究しています。
 
具体的には、国内外であらわされた日本語研究資料を扱いながら、どのような日本語が用いられていたのか、そして前代と次代において、いかなる変化が生じてきたのかを調べています。
海外との関わりは、アジア地域はもとより、キリシタン、その後のオランダをはじめ、さまざまな国や地域などが挙げられます。そのために、19世紀以前から国内外で日本語はさまざまなかたちで研究されていますが、開国に向けて来日した外交官・宣教師・商人などにとって、日本語は日常生活はじめ欠くことのできないものでした。また、海外においては国際的な視点からの日本の理解の必要性や、そもそもの東洋への関心から日本語が研究されました。そして、日本側もそれまで以上に海外へ目を向けることで、日本語を客観的に相対化することになります。
 
例えば、明治初期には独和辞書が多数刊行されています。その理由として、条約の制定、また医学や法学への関心がとても強くなっていたことが関わります。このように対象とする資料の把握はもとより、それらを著したり関わったりした人物、またその時代や背景を意識し理解することが常に欠かせません。
対訳辞書全般をとっても、日本語を母語とする者が他言語を知るためなのか、他言語を母語とする者が日本語を知るためなのかでは、方向性が異なります。作成の意図、想定される読者、当時の様相などを踏まえ、日本語学的に検討を行うことになります。
また、国内外の日本語研究資料を扱うため、資料の調査に出向くことも多くあります。実物を手に取って確認することで、複製や画像データでは分からない多くのことに気づかされます。判読し得ない部分の解読はもとより、例えば、装丁や資料の大きさを一つとっても、厚さはどのくらいであったのか、持ち運びが可能であったのかなどと、さまざまなヒントを与えてくれます。このようなことから、いかに資料が扱われたのかといったことが推測できます。さらには、どのような紙に記されているのか、筆記用具は何を用いたのか、また紙片や書き込まれたメモなどが重要な情報をもたらしてくれることもあります。
このように、時空間を駆け巡りながら、調査・研究を行うダイナミックな領域です。

 

Q.研究者として、つらかったことや、嬉しかったことは?

つらかったことは、だれしも同じであると思いますが、思うような結果が得られない時です。芳しくない時は、ある先生が「ホームランは狙わずに、打席に立ち続けること」とお話しくださったことを思い起こしながら進めています。コンスタントに事に当たるということを伝えてくださったものと思っています。研究に必要なあらゆる組み合わせをじっくりと考えて、すべて検証していくことになります。そのために、思いついたこと、調べなければならないことは、後回しにせず、手を抜かずにと心がけています。

うれしかったことは、一つ一つ時間をかけて、裏付けを取りながら進めたデータから、これまでの見解を超えたり、指摘されたりしていなかった結論が実証できた時です。ただ、一つのことに最低数年を要することになります。

 

Q.大学院で学ぶことの魅力とは?

多様な専門の先生方の授業を受講できるということです。まったく意識もしていなかったことから新たなことを学んだり、はからずも自身の研究テーマのヒントになったりすることがあると思います。ただ、待っていても受け身になっていても、何も進みません。積極的に関わりを持ち、取り組むことが大切です。

 

Q.大学院で学びを考えている受験生にメッセージを一言。

研究テーマに没頭できる時間かと思います。試行錯誤を続けていることが認められ、あわてて結果らしいものを見つけ出す必要がないということです。実生活の中で、自身の関心事に集中できる時間はとても限られているのですが、それを可能とすることができるのではないでしょうか。是非、夢に見るくらい終始考えてください。一方、頭に浮かんだことをそのままにせず、じっくりと取り組みつつ、一定時間、一定成果も心がけてください。

腰を据えて、納得のいくまで調べ・考えることができる貴重な時間が得られると思います。また、 大学院には、さまざまに、またとない出会いが待っているはずです。

 


プロフィール

名前: 木村 一(きむら はじめ)

経歴: 現在、東洋大学大学院文学研究科日本文学文化専攻 教授

           博士(文学)(2013年3月 立教大学)

           東洋大学大学院文学研究科国文学専攻中途退学(1999年3月)

           東洋大学文学部助手、明海大学外国語学部専任講師などを経て、2008年4月から東洋大学

専門: 日本語学

著書: 『和英語林集成の研究』(2015)明治書院ほか

http://ris.toyo.ac.jp/profile/ja.081e31a2227269e9b68d301fa8bdcc23.html


(掲載されている内容は2022年5月現在のものです。)