法学研究科私法学専攻 博士前期課程2年 齋藤 恵さん

 齋藤 恵さん

密度の濃い授業を通して、
人々の生活を支える法の未来を見つめる。

※掲載されている内容は2011年7月現在のものです。

Q. はじめは大学院進学を迷われていたそうですが?

当初は学部を卒業したら中高の社会科教員として教職に就くつもりでしたので、大学院進学をすぐに決めたわけではありませんでした。でも、卒業論文のテーマとして学校事故や安全配慮義務について研究をするうちにもっと勉強したいと思うようになり、大学院への進学を決めました。

Q. では、研究テーマは学校事故や安全配慮義務について?

それが少し違うのですが、学校事故はすでに多くの研究者によって研究が進められた分野であり、学部の卒業論文を書いた時点で、自分なりにもある程度納得のいく答えが出ていました。
そこで、私なりの新たな研究テーマを探していたところ、学校事故に関する裁判の判決理由の中で、「学校事故における安全配慮義務は在学契約に付随する義務である」といった説明が多くなされていることに気がつきました。でも、実際には裁判例にそのように記載されているだけで、在学契約の詳細についてまでは言及していませんでした。そこで調べてみたところ、在学契約自体が発展途上の契約理論であることや、論ずべき課題が多く残されていることを知り、興味が湧き取り組むことにしました。
研究テーマは『学校教育における在学契約に関する一考察 ?在学契約の法的性質を中心に?』。在学契約論はこれから発展していく分野なので、とてもやりがいを感じています。

Q. 研究について、もう少しくわしく聞かせてください。

国公立・私立を問わず、学校と児童・生徒・学生との法的関係が「私法上の契約」、すなわち「在学契約」に基づいていることは学説・判例ともに認めるところです。しかし、在学契約の法的性質は何か、これまで確立されてきた契約理論との関係はどうなのか、契約を構成している要素は何か、在学契約の当事者は誰なのか、などといった性質論そのものについては必ずしも議論が尽くされたとは言えない状況にあります。
そこで私は、「在学契約とはどのような契約なのか」という根本的な問題について、これまで確立されてきたさまざまな民法理論・契約理論と在学契約とを照らし合わせながら考察し、その法的性質を解明できないかと考えました。これは実に壮大な試みであり、なかなか時間と労力のかかるものですが、在学契約の法的性質を少しでも解明することができれば、その先の問題……例えば教育役務提供債務の不履行による学校側の責任など、近年の判例において新しく出てきた問題について考察する上での手がかりとなると考えています。

Q. 先生方とのコミュニケーションはどんな様子ですか?

昨年度は先生とマンツーマンの授業が多かったせいもあって、授業中はお互い真剣。真正面から先生と向き合い、実にピリピリした雰囲気の中で授業が進みました。でも、授業が終わると今度はお互い笑顔。ときにはプライベートな話まで、いろいろとおしゃべりをしました。
先輩方もみなさん気さくで優しく、授業で扱った判例について、授業が終わっても討論を重ねたものです。研究分野は同じ民法でも、先輩によって研究している内容が全く異なるので、一つのテーマをさまざまな視点から検討することができ、毎回有意義な討論を行うことができました。
今年度はマンツーマンの授業は少なくなりましたが、授業が終わるたびに先輩方とはよくお話をしています。ときには私的な相談にも応じてくださるので、非常に有り難く思います。

Q. これからの目標や展望は?

学部時代を含め、これまで研究してきたことを、今度は実際の教育現場で活かしていきたいと思います。例えば、学校事故に基づく損害賠償責任について研究したことは、事故予防にも使えると思います。
私は、「実際にどのような事故が起き、どのような事実に基づいて学校側の責任が問われたか」という、ある意味「最悪の事態」についていろいろと見てきたわけですから、同じ結果を起こさせないためにどうすれば良いかということを考えながら学校運営に携わることができると思うのです。 また、在学契約論についても、入学手続に伴うトラブルや教育債務の提供に不履行があったときに有用であると思います。
さらに、近年の社会科教育においては「法の重要性」が見直され、法的なものの見方・考え方を子供たちに身に付けさせることが求められています。そのような意味でも、私がこれまで学んできたことを教育現場で活かすことができたら嬉しいです。