MENUCLOSE

教員からのメッセージ(国際観光学専攻 飯嶋 好彦教授)

大学院は,総合病院のような存在

(掲載されている内容は2018年12月現在のものです)


Q 研究者になった経緯

私は、大学に移る前、企業人でした。そして、ホテルや商業施設の開発やそのマネジメントを担当していました。しかし、この仕事の参考になる本や資料がほとんどありませんでした。そのため、仕事の進め方が正しいのかがわからず、手探り状態で、不安な気持ちでそれに取り組んできました。GDPの6割以上をサービス業が生み出し、雇用人口の7割以上がサービス業に従事しているものの、わが国にはそれに見合うだけの学術的な蓄積がありません。そのため、私のような不安感を抱きながら仕事する人が多いのだと思いつきました。学術的な蓄積がなければ、自分でつくるしかない、そして、サービス業に従事する人の役に立ちたいと思い、研究者の道を選びました。

Q 研究テーマ

サービス・マーケティング&マネジメントという学問分野があります。サービスでは、モノづくりと異なり、生産と消費が同時に起こります。加えて、サービスでは、例えば美容院で髪形を注文したり、セルフサービスのレストランでは自分で配膳したりするようにより、顧客が生産過程に関与することが多いです。このことから、サービス特有のマーケティング・マネジメント課題が生起します。そして、その課題を考察するのが、サービス・マーケティング&マネジメントです。私は、この学問分野から研究をスタートし、特にホテルやレストランを研究対象にしてきました。しかし、サービス、特にホスピタリティでは、その中核に従業員が存在しています。彼・彼女が動機付けられ、精一杯働くことで、顧客から信頼を得ることができ、会社が繁栄します。そこで、私は、ヒトの問題を取り扱う人的資源論へと研究の軸足を移しました。さらに、従業員は機械ではなく、心をもっています。そのため、そのマネジメントには、心理学の知識が不可欠です。そのため、現在は、人的資源論に心理学を取り入れた研究を行っています。

Q 研究者としてつらかったこと、うれしかったこと

私が大学院に進学したのは、社会人になって10年後のことでした。修士課程は、MBAという課程であったため、論文を書いたことがありませんでした。30歳後半になり、後期課程に進みましたが、そこでの授業は論文指導が中心でした。しかし、私は、論文の書き方がわからず、また、いまさら論文の書き方を教えてほしいとは言えませんでした。そのため、私は、論文を理解するために、他者、特に英米の研究者のそれを読むことで、論文の形式を理解しようと試みました。後期課程の授業では、修士課程の学生も加わり、出席者は私よりもみな若い学生でした。その学生から論文の稚拙を指摘されることが恥ずかしく、この時代が最もつらい日々でした。

一方、私は、大学院での指導教員に恵まれました。指導教員に論文を何度も赤ペンで添削され、返されました。その添削結果を見て、なぜ先生はこの箇所を直したのかを自問しました。そして、これを繰り返しことで、研究の仕方や論文の書き方を自得することができました。いまの私があるのは、この先生のおかげであると感謝しています。

Q 大学院で学ぶことの魅力

大学院は、総合病院のような存在です。各診療科の先生が揃っており、症状(研究テーマや研究手法など)に合わせて、適切な指導を受けることができます。確かに、研究は個人でもできますが、大学院が有するこの総合性は、最大の魅力です。

 また、共に学ぶ学生がいることで、刺激になります。「他人の振り見て我が振り直せ」という格言があります。自分の利点や欠点はなかなかわかりませんが、他者を通じることでそれが理解できると思います。ここにも大学院で学ぶ魅力があります。

Q 受験生にメッセージ

特に、社会人で大学院進学を検討している方にひとことアドバイスがあります。社会人が大学院で学ぶとき、自分の仕事に関連する研究テーマを選びやすいです。実は、私もそうでした。それ自体は問題ないのですが、その研究をどのように進めるかは大きな課題です。社会人学生のなかには、これがわからず最初の1年間を無駄に過ごしている人が多く見受けられます。

学部時代に卒業論文を書いた経験があれば良いのですが、それがない場合は、テーマを選ぶとき一緒に、研究の進め方、例えば既存研究はあるのか、どのような調査が必要なのかなども検討してください。

また、大学院には聴講生制度があります。一種の「お試し入学」です。社会人にはお勧めの制度です。この制度を使い、大学院の授業を体験できると同時に、正式に入学する前に、先生方と相談して研究テーマを再考できます。聴講生として履修した単位は、入学後の卒業要件単位に振り替えることができますので、無駄ではありません。この聴講生制度も検討してください。

 

プロフィール

飯嶋 好彦(いいじま よしひこ)

経歴 大学卒業後20年間民間鉄道会社に勤務し、商業施設やホテル施設の開発に携わり、

1999年に東洋大学に移ってきました。大学院では、博士前期・後期課程を担当しています。

専門領域 サービス・マネジメント&マーケティング、ホテル経営、人的資源論、社会心理

著書 飯嶋好彦『サービス・マネジメント研究』文眞堂、2001

同 『フル・サービス型ホテル企業における女性の人的資源管理』学文社、2011年