Vol.4 SDGsと観光が果たす役割

News Letter Vol.4 
新しい観光のパラダイム
SDGsと観光が果たす役割
東洋大学 国際観光学部教授 古屋秀樹
2021.11.2

2021年4月に行われた世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)の年次総会で、グロリア・ゲバラ会長(当時)は「私たちは2019年には戻らない。前へ進む」と挨拶しました。
東洋大学国際観光学部では、「新しい観光のパラダイム」と題し、コロナ危機を乗り越え、ツーリズム産業を前に進めるための手掛かりを示すコンテンツを連載していきます。テーマは「IR」「SDGs」「ライブエンターテインメント」「国際交流の復活」の4つです。本学部ではこれからも、変化に対応し、時代を切り拓ける人材を育成していきます。

SDGsという言葉を耳にしない日はありません。SDGsとは国連によって17の持続可能な開発目標とそれに関係する169の達成基準が示されたSDGs(Sustainable Development Goals)1)のことです。“宇宙船地球号”を未来の世代に残すために世界中が取り組んでいます。観光の分野でも役に立つことが数多くあり、東洋大学国際観光学部では重要なテーマとして教えています。


持続可能な地域再生事例―えりも岬(北海道)



自然環境を例にとると、それは複雑で微妙なバランスの上に成り立っており、それを長期的な視点で保全する必要性を教えてくれる事例がえりも岬です。
襟裳岬は北海道・えりも町(人口約4,500人)にあり、日高山脈の最南端に位置し、太平洋に向かって南へ突き出していて、海上には岩礁が点在するきれいな風景がひろがっています。
「かつて、カシワなどの広葉樹の原生林で覆われていたものの、明治以降、燃料としての木々の伐採や、牛・馬・綿羊の放牧などによって,原生林は切り開かれ、えりも岬特有の強風にさらされ、大地は砂漠化してしまい、その赤土で岬沿岸の海は黄色く濁り、海藻類は根腐れをおこして採れなくなりました。そんな状況を脱するため、本格的なえりも岬の緑化事業がスタートしました。草花の種をまいても強風に飛ばされてしまいますが、試行錯誤の結果、海岸に打ちあがっている雑海藻を種をまいた上に覆い、種が飛ぶのを防ぐことに成功します。植林の成果が上がるとともに、海には回遊魚が戻ってくるようになり、コンブなどの海藻類も採れるようになった」とのこと。(えりも町百人浜緑化事業HPより引用)
この取り組みを、地域の歴史・魅力として、訪れる人たちにわかりやすく伝え、未来に残すことが観光の役割になります。

旅行とカーボンフットプリント

また、旅行自体が大きなエネルギー消費を引き起こしている事実にも目を向ける必要があります。


図1 世界の観光に関連した部門別二酸化炭素排出量(カーボンフットプリント)2)

図1は、世界における旅行に起因した部門別二酸化炭素排出量を示したものです。約半分が交通で、商品の購入、料飲、宿泊なども10%前後を占めていることがわかります。エネルギー効率の高い交通機関を選んだり、地産地消への配慮、マイバッグ・マイ歯ブラシの持参やシーツ交換頻度を少なくするといった取り組みは旅行者の心がけで実現できます(レスポンシブル・ツーリズム:責任ある観光といいます)。
さらに個人の取り組みに加えて、観光関連産業の取り組みが十分であるかチェックしたり、そのための体制を考えることも重要です。運輸関連のエネルギー効率化、持続可能な観点を重視したホテルの運営、サステナビリティの基準を満たした現地ツアーの造成や実施、持続可能な観光のための資金提供やプロジェクトの実施にも目を向ける必要があります。
東洋大学ではこのような事例研究、政策研究によって、観光を通じてSDGsを達成できる人材を育成しています。


参考文献
  1. ^United Nations (2015): Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development.
  2. ^Carbon Footprint of Global Tourism, https://sustainabletravel.org/issues/carbon-footprint-tourism/

古屋 秀樹

東洋大学国際観光学部 教授
専門分野:土木工学、土木計画学・交通工学
研究キーワード:持続可能な観光地形成、地域の観光振興・観光交通計画、観光行動分析、データサイエンス

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