東洋大学学長 矢口 悦子

学長メッセージ

未来を哲学する、東洋大学
「他者のために自己を磨き」
行動する大学であり続ける

東洋大学の創立者・井上円了先生は、人々のために何ができるかを真摯に追求し、社会教育に生涯を捧げた実践家です。1887年に「私立哲学館」(東洋大学の前身)を設置し、「諸学の基礎は哲学にあり」の建学の精神のもと、物事を深く考え、真理を追究することを基盤とした教育を始めました。その翌年には、「余資なく、優暇なき」人々のための通信教育を開始しました。その伝統は、東洋大学における夜間部教育として脈々と生きています。

さらに、円了先生は、30歳代、40歳代、50歳代に世界一周旅行を決行し、それぞれ8か月から1年をかけて世界の政治や宗教、教育を見学し、人々の生活の基盤にある思想やものの見方を見極めようとしました。世界各地で得られた知見は、東洋大学における真のグローバル化を目指す異文化交流の発想に引き継がれています。同時に、見分をもとに、日本各地で巡行(その地を訪問して講演を行う)を続け、その回数は後半期だけでも、5,291回に及んだと記録されています。民衆が迷信から解放され、自分の頭で考え行動することが日本人には必要だ、という洞察に裏打ちされたものでした。

こうした円了先生の思想や行動は、現在の東洋大学にも引き継がれています。ましてや、世界情勢が急激に変化を遂げ、ICT革命の中に生きる今、自分の生き方を確立するのはたやすいことではありません。とことん自己を磨き、活動の中で他者の役に立つように奮闘する、そうした日々の努力の積み重ねの中で、私たちは他者の力を借りながら、自分なりの軸を確立していくのではないかと考えています。現代社会を生きるうえで最も重要な「哲学すること」を建学の精神として掲げる東洋大学は世界に誇れる大学です。

東洋大学学長 矢口 悦子

さて、これから東洋大学が特に力を入れようとしていることについて、いくつか紹介いたします。まずは、多様な専門性を持つ教員による教育を学部やキャンパスを超えて学び合える仕組みを構築したいと考えています。同時に、いわゆる自然科学系であっても人文社会科学系と呼ばれる研究であっても、研究が何を目指しているのか、それを実装することにはどのような意義があるのか、それを互いに領域の異なる視点から検証し合う研究の仕組みの構築です。教育と研究、双方における総合的な知の融合であり、哲学を建学の理念とする本学の特長がそこに出てくると思います。

もう一つは、広い意味でのリカレント教育の展開です。「人生100年」時代を生きる人々が、知の受け手から創造主体へと変貌することを支える新たな大学像の創造であり、本学にはその基盤があります。総合大学としての東洋大学には、多様な領域に関する研究者が揃っており、多彩な研究成果が世界的な課題の解決に役立つと信じております。また、具体的な課題への取り組みとしては、国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)が足掛かりになります。本学はすでに、2021年に「学校法人東洋大学SDGs行動憲章」を制定し、多面的に取り組みを進めています。

学生を真ん中に据えて、教職員が一丸となって、東洋大学の建学の精神を正しく継承し、日本はもちろんのこと世界の人々のために貢献できる大学、すなわち「他者のために自己を磨き」、行動する大学であり続けたいと思っております。

2024年 4月 1日

東洋大学学長

矢口 悦子

Etsuko Yaguchi

PROFILE プロフィール

略歴

  • 1956年12月:秋田県生まれ
  • 1975年3月:秋田県立横手高等学校卒業
  • 1980年3月:お茶の水女子大学文教育学部教育学科卒業
  • 1986年3月:同大学院人間文化研究科(博士課程)単位取得満期退学
  • 1992年4月:お茶の水女子大学非常勤講師(~2002年3月)
  • 1994年10月:千葉大学非常勤講師 (~2000年3月)
  • 2000年4月:山脇学園短期大学教授(~2003年3月)
  • 2003年4月:東洋大学文学部教授(~現在)
  • 2013年4月:東洋大学社会貢献センター長(~2015年3月)
  • 2015年4月:東洋大学文学部長・学校法人東洋大学評議員(~2019年3月)
  • 2020年4月:東洋大学学長(~現在)

学位・称号等

  • 博士(人文科学)(お茶の水女子大学・1998年)

専門領域

  • 社会教育学
  • 生涯学習論

主な著作

  • 『イギリス成人教育の思想と制度―背景としてのリベラリズムと責任団体制度―』、新曜社(1998)
  • 『地方分権と自治体社会教育の展望』(共)、東洋館出版社(2000)
  • 『女性センターを問う―「協働」と「学習」の検証』(共)、新水社(2005)
  • 『変革期にあるヨーロッパの教員養成と教育実習』(共)、東洋館出版社(2012)
  • 『地域を支える人々の学習支援―社会教育関連職員の役割と力量形成―』(共)、東洋館出版社(2015)
  • 『英国の教育』(共)、東信堂(2017)
  • 『日本の文化と教育』(放送大学教材)(共)、放送大学教育振興会(2023)

学会活動等

  • 日本社会教育学会(会員)
  • 日本教育学会(会員)
  • 一般社団法人 日本私立大学連盟(常務理事)
  • 公益財団法人 大学基準協会(理事)
  • 一般社団法人 経済同友会インターンシップ推進協会(理事)
  • 一般社団法人 大学スポーツ協会(UNIVAS)(理事)