本校および東洋大学の創立者である井上円了先生は、1919(大正8)年6月6日、遠征講演先の中国・大連にて講演中に倒れ、逝去しました。
本校では、円了先生の命日月の近くに、学祖井上円了先生を偲ぶ「学祖の日」を設定し、円了先生の志を受け継いで哲学をはじめとする学問にしっかりと向き合い、社会に貢献できる人材となることを再認識すべく、新入生を対象とした学祖について学ぶ講演会を実施しています。
今年度は、5月31日(土)に、東洋大学井上円了記念博物館 学芸員の北田健二先生をお招きし「『不思議』と向き合う哲学者 井上円了」というテーマでお話をしていただきました。
講演は、井上円了先生の人となりについての紹介から始まり、哲学者であり教育実業家という公に知られていること、明治時代に3回も海外視察に行くなど、精力的に他国について学ぶ人物であったことなどが紹介されました。さまざまなことに関心を持ち続け、哲学に対する姿勢と同じくらいの熱量で「妖怪」についても研究され、「妖怪先生」と称された方でもあります。井上円了先生は、「妖怪」を「この世でありとあらゆる不思議とされるもの」と解説されています。
また、円了先生は、「ものの見方・考え方は中道であれ」と説き、一方に偏らない考え方や分析を行うことが大切であるとしました。思い込みや偏見を取り除いて研究対象と向き合い、分析し、最後まで根気よく考え抜くことで、物事を解明できるのではないかとも説きました。
「諸学の基礎は哲学にあり」「哲学は人の思想を錬磨する」と伝えたことや、研究に対する粘り強い真摯な姿勢、活学としての哲学の実践に努められた円了先生のお話に、生徒たちは熱心に聴き入っていました。
北田先生は「思い込みや偏見は研究に向き合うのに邪魔になる」「とことん考え抜くことが哲学である」とお話しされました。そして「多くのことに関心を持ち、考え続け、いろいろなことにチャレンジしてみてください」と生徒たちに語り掛けてくださいました。
今後も学校生活の中でさまざまなことに直面することでしょう。その時々において自らの意思で考え、より深い学びや行動ができるよう成長していってほしいと願います。