熱に弱い血管細胞を
保護する成分を探し出す
近年の日本では、気温上昇に伴う熱中症患者数の増加が大きな問題になっている。水分と電解質の補給や住環境の改善など個人レベルの予防策は取られているものの、発症のメカニズムについてはいまだに不明な点が多いのが現状だ。そんな中、加藤和則教授は専門分野である細胞機能学の知見を武器に、熱中症の研究に立ち向かっている。
「熱という負荷が体にかかることで熱中症は起こります。では、体のどこが熱に一番弱いのか?そんな疑問が湧いてきたとき、ある医師が『血管は熱に弱い』と言っていたことを思い出しました。そこで約40℃の環境で血管の細胞を培養してみると、多くの細胞が死んでしまったのです。詳しく調べると、高温環境によって血管の内側にある血管内皮細胞が変形していることが判明しました。その細胞を熱から保護する成分が体内にあれば熱中症を防げるのではないか?と考え、候補となる物質を探す研究が始まったのです」
ブドウ糖をエネルギーとする他の細胞と異なり、血管の細胞は脂肪酸をエネルギー源としていることに注目した。脂肪酸の代謝に関わること、そして野菜や果物に含まれており人体への影響が少ないことを条件に成分探索を続けた結果、複数の有効成分を特定し用途特許を取得。そのうちの一つが、ハッサクの皮に含まれるオーラプテンという物質だ。