東洋大学 東洋大学 研究・産官学連携活動案内 2021

SPECIAL ISSUE 03

文章に含まれる意見や感情を
瞬時に分類する技術を開発

安達 由洋

総合情報学部教授(総合情報学科)

授業の改善を目指して
スタートした研究

「授業をしていると、集中できていない学生や内容を理解できていない学生がいることに気付きます。より良い授業につなげるためには、その場でアンケートをとって理由を明らかにすればいいのではないか?そう思ったことが、今回の研究を始めたきっかけです」

そう語るのは、総合情報学部の安達由洋教授。現在、自然言語処理技術を用いて、自由記述のアンケート回答文を超高速に分析する技術の開発に取り組んでいる。普段、人間が使っている言語をコンピュータに処理させるには、高度な技術が必要とされる。そのために開発されたのが、文章を品詞ごとに細かく分割し、それぞれの単語を判別させる形態素解析という技術だ。また、個々の単語に、それぞれが持つ意味合いを数値化したベクトルを与えて計算処理を可能にする意味分散表現と呼ばれる技術も進歩している。安達教授はそれらに独自の技術を導入することで、アンケート回答文に含まれた意見を瞬時に分析し可視化することを目指しているのだ。

「単語の特徴を表す高次元のベクトルを基に、文章を分類・検索すると処理速度は遅くなりますが、それを低次元のベクトルに意味分散表現する手法を用いれば、高速な処理が可能です。それにより、例えば“洋服”という単語が文章に含まれていなくても、“洋服”に関する記述を分類・検索できるようになりました。また、10,000もの自由記述文をわずか1秒以内に分類する処理速度を実現しています」

独自のアルゴリズムにより
文章から感情を読み取る

従来の自然言語処理の手法では、文章に含まれる感情まで処理することは難しく、“勉強が好き”も“勉強が嫌い”も同じ話題の文としてまとめられてしまっていた。しかし、安達教授はそれを解決する手法も生み出した。

「感情語を10種のカテゴリに分類した辞書を作成し、各単語に感情の強さを表す4段階のベクトルを付与しました。それを基にアルゴリズムを作成したことで、文章に含まれる、ポジティブ、ニュートラル、ネガティブな感情をコンピュータに判別させ、分類することが可能になりました。例えば、“娘が結婚して大変嬉しいが、少し哀しい”といった文章から、“非常に嬉しい”と“少し哀しい”という繊細なニュアンスの感情を判別して抽出できるのです」

授業の質を改善したいという思いから生まれた研究アイデアだったが、開発された技術は広く応用される可能性を秘めている。
「講演会や集会で参加者の心理や感情の状態を分析して、リアルタイムに講演内容に反映させることが可能になるほか、SNSなどで発信される意見を抽出して商品やサービスの向上に生かすことも考えられます。また、小説に含まれる話題と感情を分析して、読みたい内容の小説を選ぶ支援ができるようになるかもしれません。このように、社会に役立つ技術を開発したいという思いを、日頃から学生に伝えています」

実際のプログラミング画面を見せながら、自由記述文検索の実行例を示す安達教授。学生は全員ディープラーニングや自然言語処理の高度な手法を習得しているという。

Profile

安達由洋

安達 由洋

総合情報学部教授(総合情報学科)

安達由洋

安達 由洋

総合情報学部教授(総合情報学科)

名古屋大学にて工学博士号を取得後、1980年より東洋大学に勤務し、講師、助教授を経て現職。人工知能や自然言語処理技術を応用した情報処理システム、ソフトウェア自動生成システムを用いた情報処理システムの実装などに関する研究に取り組む。

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