INDEX

  1. SDGsを自分事として考え、深く考えるヒントを提供したい
  2. ビジネスコンテストの運営から、企業連携まで。多彩な活動が、人々を巻き込むきっかけに
  3. 具体的に・シンプルに考えることがSDGsアクションを広げるコツ

INTERVIEWEE

三浦 央稀

MIURA Hiroki

東洋大学 経済学部総合政策学科 4年
2018年、SDGsとダイバーシティに取り組む学生団体「TIPS」を設立し、代表を務める。
学生団体TIPS Webサイト

SDGsを自分事として考え、深く考えるヒントを提供したい


   
――学生団体「TIPS」は、「SDGs」と「ダイバーシティ」に関わる活動を通じて、学生の成長を促すことをテーマに、2018年に設立されたそうですね。そもそも、三浦さんがSDGsやダイバーシティに興味を持ったきっかけは、何だったのでしょうか。


私は、地元の街をもっとよくしたいと思ったことをきっかけに、中学生の頃からまちづくりに興味を持ってきました。高校時代に海外の都市を見てみたいと考え、留学を意識する中で、アメリカのポートランドと、フランスのストラスブールという街を知りました。この二つの街に強い魅力を感じ、深く調べていく中で、特にポートランドでは、まちづくりのプロセスのなかで市民が活発に声を上げ、人種や国籍、宗教、ジェンダー、障がいといった“マイノリティの暮らしやすさ”と、自然と近接し共生する“都市の持続可能性”が重視されていることを知りました。そこから、これから街をつくるには、多様性と持続可能性が欠かせないキーワードであることを強く意識するようになりました。

こうした海外の事例に触れ、多様性と持続可能性を深掘りしていくうちに、「日本でも、まちづくりの領域に限らず、もっとSDGsとダイバーシティに関心を持って取り組まなければいけない」と思うようになりました。SDGsの期限である2030年、そしてその先の社会で中核を担う私たち若い世代が積極的に行動を起こしていかなければ、実現は難しいだろうと考えたのです。

また、まちづくり分野で著名な方の講演会に足を運んだり、マルシェやワークショップなどの現場に参加させてもらったり、SDGsに関する情報を自分で集めたりしていくうちに、多くの方との出会いがありました。そうして自分が体験した「新しい出会い」による成長を、周囲の学生に共有できないかと思いました。その想いから、学生団体を立ち上げることを決め、信頼する東洋大学の3人の仲間に呼びかけてTIPSを設立しました。

――「TIPS」という団体名には、どのような意味が込められているのでしょうか。

団体名には、2つの意味を持たせています。一つは、設立当初の正式名称だった「国際政策研究会」を英語にした「TOYO International & Politics Study group」の頭文字です。設立メンバーは経済学部総合政策学科と国際学部の学生だったことから、それぞれの学びを活かしつつ、SDGsやダイバーシティという国際的な課題を扱う団体でありたいと考えて名付けました。もう一つの意味は、役に立つヒントやコツ、アドバイスを表す「tip」という英単語に由来します。団体の活動テーマには、SDGs・ダイバーシティと並んで「学生の成長」を掲げていて、TIPSを通じて関わる人の学生生活に、tipsを提供できたらと思っています。

――TIPSは、活動テーマのほかにも、「『哲学する』サークル活動」をサークルの理念として掲げられていますね。

この理念は、東洋大学発の団体としてSDGsやダイバーシティにどう向き合っていくかを示しています。東洋大学の建学の精神は「諸学の基礎は哲学にあり」。「哲学」という言葉からは哲学科で学ぶような思想や古典をイメージしがちですが、前学長の竹村牧男先生がインタビューで「哲学とは、先入観や偏見にとらわれず物事の本質に迫って、自らの問題として深く考えることととらえ、その営みの下で主体的に社会の課題に取り組むこと」だと語っておられるのを拝見して、SDGsやダイバーシティという大きな社会の課題に取り組む姿勢を表すのにこれ以上の言葉はないと思い、すぐに取り入れました。

日本国内でも格差や災害、ジェンダーギャップなどさまざまな課題があるとはいえ、東京の大学に通う人の多くは、日常でSDGsが掲げるゴールやダイバーシティを意識することはあまりないように思います。しかし、自分の周囲の、今現在の日常という視野ではなく、「自分の行動が気づかないうちに環境に負荷をかけているかもしれない」「何気ない言動で差別に加担していたかもしれない」「安く手に入る品物はどこかの国の子どもや労働者が過酷な環境で作らされているものかもしれない」「環境や世界情勢の変化で食べ物が手に入らなくなるかもしれない」など、広く長い視野と、先入観や偏見にとらわれない柔軟性を持って、自分事として意識や行動を変えていかなければなりません。日常の習慣を見直してみるといった小さなことからでも、一人一人が当事者として関心を持って、社会にアクションを起こしていくことが非常に重要です。
   
この「哲学」は、創立当初から哲学教育に取り組んできた東洋大学がSDGsやダイバーシティといった分野に取り組む上で他大学にはない大きな強みになると思うので、大学にはより一層SDGsやダイバーシティに積極的になってほしいですし、TIPSとしても大学の動きをさらに活性化させていけたらと思います。
      

ビジネスコンテストの運営から、企業連携まで。多彩な活動が、人々を巻き込むきっかけに


学生マイボトルコンテスト2019受賞時の写真。左が三浦さん


――TIPSは設立から約2年半ですが、短期間ながら幅広い活動を行っていますね。

はい。SDGsもダイバーシティも広い視野を持って取り組まなければなりませんし、そうした多彩な活動フィールドが、一人一人が活躍し成長する場になると考えています。

TIPSはもともと、学生がSDGsと向き合う切り口として、ビジネスで社会課題を解決するソーシャルビジネスのアイデアを競う世界規模の学生コンテスト「Hult Prize(ハルトプライズ)」を東洋大学で開催することを目的に設立しました。学内大会はなんとか開催にこぎつけたものの、ゼロから考えたビジネスアイデアを英語でプレゼンするというハードルの高さもあり、東洋大学生からの関心は高いとは言えませんでした。
   
一方で、SDGsをテーマに掲げる団体として、私たち自身もSDGsを学び、考えていくことが重要であるという思いから、SDGsに関連する学内外のコンテストに参加しました。その結果、2018年に参加した東洋大学経済学部主催の「フードロス削減提言会」では最優秀賞を、2019年の浄水器メーカーBRITA社による「学生マイボトルコンテスト2019」では特別賞BRITA賞をそれぞれ受賞し、これをきっかけ知名度も上がり、活動の幅も広がっていきました。SDGsに関する活動が形になってきたことから、2020年からはSDGsとダイバーシティに関するアクションに活動の軸をシフトし、Hult Prizeの運営は姉妹団体である公認サークル 「Hult Prize @ Toyo University」が担っています。

――学内外のコンテストを契機として、企業との連携活動もはじまったとお聞きしました。

「学生マイボトルコンテスト」の受賞をきっかけに、マイボトル給水に関するアプリケーションを展開するボトルト株式会社からお声掛けをいただき、連携がスタートしました。東洋大学でのマイボトル普及を図る共同プロジェクトとして、2020年5月にはTIPSとして初となるSDGsをテーマとしたオンラインイベントを開催しました。このほかにも受動喫煙防止に取り組むQuemlinや、フードロス削減サービスFreeatなどと連携したプロジェクトにも取り組んでいます。

最近ではなんとなく耳にしたことがあるという人がかなり増えてきましたが、設立当初は「SDGs?なにそれ?」という人がほとんどで、今でも詳しく知っている人はまだまだ少ない印象です。そのため、TIPSの活動のメインはイベントやメディアを通じた情報発信ですが、SDGsについて多くの人に知ってもらい、興味を持ってもらった上で、SDGsアクションを自分事として捉え、多くの人に参加してもらうことを意識しながら、企業や団体との連携に取り組んでいます。

多くの人に興味を持ってもらうという点では、2020年10月からは株式会社マイナビが運営するWebメディア「マイナビ学生の窓口」との連携プロジェクトが始まりました。SDGsに積極的に取り組む企業や団体、さらには国全体の取り組みを推進している外務省などに、TIPSのメンバーがインタビューをしています。マイナビと言えば、私たち大学生にとっては就職活動、高校生は進路選択の場面でサービスを利用する機会が多いですし、一般の方にとっても転職やアルバイト、人材派遣サービスなどで関わることが多いと思います。幅広い世代の人たちに対して「SDGsはこんなに身近なところにあるんだよ」ということを、私たちの活動を通して伝えていきたいですね。
    

具体的に・シンプルに考えることがSDGsアクションを広げるコツ

        
――SDGsは2015年に提唱されて以降、近年はテレビや雑誌、電車の中吊り広告、お菓子のパッケージなど、さまざまなところでロゴマークを目にするようになりました。一方で、「具体的に何をしたらいいか分からない」という声もまだまだ多いように思います。


SDGsの認知度は特に2020年に大きく高まったように思いますし、最近では、もともとボランティア活動や国際交流に取り組む団体がSDGsを掲げるようになったり、ジェンダーや社会課題をテーマにした団体が誕生したりすることが増えているように感じます。

ただ、仰るように「SDGsそのものを知っていても、どうしたらいいのか分からない」という人もとても多いです。「持続可能な社会」という考え方やSDGsの17の目標は包括的に表現されているため、抽象的でアクションと結びつきづらいことが一つの原因ではないかと思います。

私たちがイベントやメディアを通じてSDGsを発信するときには、ただ環境問題や社会課題の事実を伝えるのではなく、具体的にどうすればその解決に貢献できるかというシンプルなアクションを一緒に発信することを意識しています。

例えば、ボトルトとの連携プロジェクトでは、水資源を守ることの重要性やプラスチックごみによる大気汚染・海洋汚染の問題の現状を伝えるのと同時に、「マイボトルを持つことで、ペットボトルという使い捨てプラスチックを減らすことができます」というメッセージを強調しました。プラスチックごみで世界中の海が汚染されていて、その結果海の生物たちが困っているというように事実を知ってもらうことは重要である一方で、それだけでは身近に感じてもらうことができず、どこか他人事になってしまい、意識や行動の変化につながりにくくなってしまいます。マイボトルを持ち歩くとか、使い捨てプラスチックの消費を減らすことを心がけるといった、日常の中の小さなことからでもSDGsは実践できると思ってもらうことが大切です。

ほかにも、食品ロスの問題では、廃棄されている食品の現実を知ってもらうことと合わせて、使うだけで食品ロス削減に貢献できるFreeatやお店を取り上げたり、身近な製品の材料がSDGsに貢献していることを発信して、それを意識的に選んでもらうようにしたりといった工夫をしています。最近ではフェアトレードを掲げる商品も増えているので、そういった商品を意識して選んでもらうだけで生産国の貧困や雇用の問題の解決に貢献できますし、使い捨ての容器を耐久性・機能性の高いデザインに変え、繰り返し使用できるようにする循環型のショッピングプラットフォーム「Loop」が日本に上陸して多くの企業が参加を表明しているなど、今後はますます生活の中で、意識すれば普段の買い物の“ついで”に、簡単にSDGsに貢献することができるようになります。「自分の行動する範囲で」「身近な部分で」どうやったらSDGsにつながるのかを考えるきっかけを創り出し、みなさんとSDGsをつなぐ架け橋になれたらと思っています。

――最後に、SDGsが掲げる2030年、若い世代である大学生の皆さんは30歳前後を迎えます。どんな社会になっていてほしいと思いますか。

物質的な豊かさ以上に、一人一人が尊重され、精神的に豊かに生きられる社会になっていてほしいですね。そのための手段がSDGsの達成であり、ダイバーシティの実現であると思います。TIPSの活動だけではSDGsすべての目標にコミットすることはできませんが、SDGsを意識した身近な行動変容を広げて、2030年のSDGs達成にさまざまな形で貢献していきたいです。
    

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