「このアイス美味しいね!」
店頭の声にひとり笑み
記憶に留まる味を残したい
赤城乳業株式会社
Ota Kasamoto笠本 桜太さん
子どものころに所属していた少年サッカーチームのコーチが「アイスだよー」と持ってきてくれていたのが、赤城乳業のガリガリ君でした。小さいころから親しんだアイスの会社が地元(埼玉・深谷)にあると知り、「入れたらラッキー」と会社説明会と工場見学に参加しました。
ガリガリ君はコーンポタージュ味やナポリタン味を販売していたことがあります。売れなくても臆することなく挑戦し、話題となる味を残していくチャレンジ精神を感じました。この会社に入ったら突拍子もない面白いものを開発できそうだと、ワクワクしました。実際に入社してからも、その「挑戦する姿勢」は働くうえでやりがいになっています。
最初は希望通り、製造部門に配属されました。「機械で大量生産するから単純作業だろう」と思っていたら想像以上に繊細で驚きの連続でした。材料の配合や温度・タイミングなどの細かな調整が必要で、何トンもの液をつくるのに数十グラム単位の精度で配合するものもあります。「前に使った原料だから在庫も大丈夫だろう」と思い込んで発注したら、数量が足りず慌てたこともありました。「重い材料を運ぶ際の身体の強靭さ」、「仕込みの正確さ」、「温度管理や投入順の重要さ」、「段取りや確認の大切さ」などを叩き込まれた製造現場でした。
1年半の製造部門勤務の後、商品開発部門に異動しました。商品の企画や試作を行い、工場生産のための手順を確立します。お客様が「どんなアイスを待っているのか」、マーケティング部と検討を重ね、商品の形状や味、工場での適性などを一つひとつクリアしていきます。研究室でできたものでも、工場での生産規模になると再現できず苦労したこともあります。
開発部門に異動して改めて、製造現場で細かく管理していた温度や投入順、調合などの意味が深く理解できました。安全管理や品質管理と頭では分かったつもりでしたが、なぜそこまで正確さにこだわるのか、開発側の立場になってようやく腑に落ちたのです。点と点がつながり、線になりました。
開発は地道な作業の積み重ねです。研究室にこもってチームだけで試作を重ね、味をつくるというよりは、実際に街に出て他社の商品を試食したり、トレンド情報を収集したり、関係者と一緒に試食して検証したり、工場での生産のための調整をしたりと動き回っていることが多く、アクティブな職場です。
東京に市場調査に出たときは朝から晩まで人気店や有名店を巡り、食べ続けました。学生の皆さんには、いろいろな場所に出かけて少しずつでも、どんなことでもいいので、いろいろな経験を積んでもらいたいと思います。
人によって「美味しい」は違います。甘味、塩味、酸味など、人の数だけ美味しさがあり、味の追究は奥が深いとつくづく思います。
これからも尖った挑戦を続け、新しい未来を開いていきたいです。そしていつか、誰もが知っている定番の味の作り手になりたいと思います。また、すでに定番になりつつある商品でも、まだ知らない人がたくさんいます。楽しさや面白さ、味の良さを伝えていきたいです。
あるときコンビニで「このアイス好きなんだよね」と話しているお客様を見かけて、思わず小さくにやけてしまいました。「このアイスを喜んでくれる人がいる」。それが私の「記憶に留まる味づくり」のいちばんの原動力です。
※フレックス勤務制度有