堀 達貴さん
理工学研究科機能システム専攻
群馬県立渋川高等学校 出身
本田技研工業株式会社 就職
1度目の挫折は大学受験です。第一志望の国立大学の合格ラインに届きませんでした。「このままではいけない」と気持ちを切り替え、高校で3年間続けてきた陸上と学業との両立を目指そうと目標を定めました。
陸上部(白山2部体育会)の活動は4年生まで続けました。種目は1500m、日々の練習で成果が出始め「さあ、これから」というときに怪我を発症。走ることができなくなり、2度目の挫折を味わいました。
「もうどうでもいいや」と投げやりになってしまいそうになりましたが、「今は転換期に来ているのだ」と発想を変えました。怪我の治療に時間をとられると部活だけでなく勉強の時間も不足するので、時間管理の工夫が必要でした。
最も重要なことに集中し、復帰後の状態をイメージしながら、怪我の回復を待つと同時に筋力や体幹力をつける訓練方法を探しては試し、フィードバックするトレーニングを続けました。その結果、無事に復帰することができ、関東陸上競技選手権大会出場を果たすことができました。
アルバイトにも力を入れました。アットホームな個人経営の居酒屋で、顔なじみのお客様もたくさんでき、常連のお客様からいろいろな雑学や社会の情報・ノウハウなどを教えていただきました。
アルバイト中は、お客様に少しでも居心地良く過ごしていただけるよう、お名前や特徴、好みなどをメモし、再来店したときに話しかけたり、アレルギーに配慮した食材やメニューのご提案ができるようにしたり工夫しました。
お客様にとってはアルバイトも正社員も関係ありません。提供するメニューに関して質問を受けたときにうまく答えられずお叱りを受けることもありましたし、理不尽な態度をとられて反発したくなることもありました。しかし、自分の不足していた点は素直に認めて次の改善に活かすことで、接客を通じて社会とつながるコミュニケーションを学びました。
陸上の部活と理工学の研究には共通項があります。仮説と検証を繰り返すなかで力をつけていくことです。
例えば、部活では大会での目標タイムを定めると、3か月前からトレーニングを開始します。練習メニューをつくり、少しずつ目標を設定しては成果を検証して、次の改善に活かします。大会が近づいてきたら、具体的なペース配分などのイメージトレーニングを増やし、大会が終わればその成績を踏まえ、次の目標を定めて動き出します。
研究も同じです。はじめに仮説を立てて手段を決め、実行した結果を考察する検証を繰り返します。学部の卒業論文作成のときは目標を大きくしすぎて失敗し「近すぎず遠すぎず」目標設定することの大切さを痛感しました。大学院の研究では教訓を活かし、学会発表などの目標を定め、研究成果をまとめて次の研究へ活かす検証サイクルをつくりました。
両立のコツは、良い意味での諦めを持つことです。「あれもこれも」と力をかけても、一度に全部を同じ力でこなすのは困難です。割り切ってひとつに集中する時間をつくるほうが、成果につながると感じています。
また、「まず動いてみること」が重要です。始める前から自分に限界を設けるのはもったいない。興味を持ったことから、始めてみてください。私の場合、アルバイト先のお客様との会話から、思わぬところで人脈がつながり、志望企業への就職活動が大きく前進したという経験があります。
「壁が見えたときは転換期」と考え、まったく異なる考え方を知るチャンスと捉えて、積極的に人とつながってください。誰かを誘ってご飯に行くとか、いつもと違う店に食べに行ってお店の人に声をかけてみるとか、小さなきっかけをつくって話をすると、人とのつながりが増えます。気がついたらサポートしてくれる人が、周りにたくさん増えているはずです。