井上円了の教育理念

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- に 注 目 し た。 そ れ は 中 島 が 最 高 点 を つ け た も の で あ っ た ( こ の 答 案 は 文 部 省 に 提 出 さ れ た ま ま で 現
在見ることはできないが、中島によれば、教科書の趣旨を叙述したものであったという) 。
「動機善にして悪なる行為ありや」という出題に対する解答で、加藤は「動機ならざり
し結果の部分を見て、これに善悪の判断を下すべきものに非らず。しからずんば自由のた
めに弑逆(しいぎゃく)をなす者も責罰せらるべく、 ……」と書いていた。弑逆というのは、
民が君主を、子が父親を殺すという意味である。この解答は、例えば弑逆という行為は、
動機が「自由のため」という善なるものであっても、結果だけを見ると悪になってしまう いうミュアヘッドの学説に基づいたものであった。
が、この場合には目的と結果という行為全体から道徳的判断を下さなければならない、と
この答案に関する隈本と中島のやりとりが、哲学館事件の発端である。
Ⅱ 教育理念の発展
中島と隈本の問答
隈本はこの記述を発見すると、中島に質問した。 「ミュアヘッド氏のこの学説に批判を加えましたか」
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