井上円了の教育理念

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- 「私は学生の程度に合う本として教科書を選びましたから、 特別に批評はしていません」 と中島は答えた。
すると、隈本は、前年六月に政友会の実力者だった星亨が東京市役所参事室で伊庭想太 れていた人物である。 は善ではありませんか」 いえません」
郎という剣客に暗殺された事件を持ち出した。星亨は当時の新聞などで汚職をとりざたさ
「伊庭は〝国家のためにこやつを殺したのは愉快なり〟といっていますが、動機として
「あれは違います。彼の動機は単に主観的、感情的なものであって、あの場合は善とは
「しかし、動機が善ならば、主君を殺すことも悪ではないのですね」
これに対して中島は、ミュアヘッドの学説に基づいて答えた。
「弑逆も絶対的にいけないということではありません。やむを得ない場合、その動機が
善であるならば、認めることもあります。日本では主君を殺すという例はありません。イ
ギリスのクロムウェルは議会軍を率いて王軍を破り、チャールズ一世を処刑して共和制を
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