井上円了の教育理念

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- をつくった。三十五年三月に東京帝国大学および直轄校に臨時教員養成所を設置したので
ある。この新しい制度は、中学校卒業者または同程度の学力を有するものを対象に、二年
間教育して、師範学校や中等学校の教員免許を与えるというものだった。私立学校の場合
には、教育期間は三年であるし、対象も中学卒業者でなければならなかった。これは、教 を表している。
員免許の取得に関する主流はあくまでも「官」の側であって、私学はその補完ということ
また、無試験検定が私立学校にも開放されたとはいっても、その扱いには官学と比べて
不平等な面が多かった。例えば、慶応義塾は三十三年三月に認可を受けたもののすぐに取
り消されてしまったのだが、その理由は単に設備が不十分だからというだけだった。設備
の問題だけではなく、無試験検定にはほかにも条件があった。まず、卒業試験には文部省
Ⅱ 教育理念の発展
の検定委員または吏員(視学官)が立ち会って試験問題や答案を調べること。そして、試験
問題や試験方法が不適当と認められるときは変更させることができること。これらの条件
は、文部省が私立学校をその管理下に置いておくためのものであった。
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