井上円了の教育理念

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- 学部開設予告」を発表した。大学部では、国学(神道) 、 漢 学 (儒教) 、仏学(仏教)のうち、
儒教(東洋の倫理学)と仏教(東洋の宗教学)をそれぞれ倫理科と教育科として開設し、入学資
格は中学卒業程度の学力を有するもので、修業年限は五年であった。国学がはずされたの
は、専修科設立のときと同じ理由で、神道の専門的学校がすでに存在したからである。
また、大学部開設にあたっては、原町の敷地は京北中学校の専用とし、新たに一万坪程
度の土地を購入して哲学館を移転させる予定だった(この用地として、八月には東京府下の豊多摩郡
野方村字和田山の一万四千四百数十坪が購入されたが、哲学館事件などの問題で移転は行われず、ここには後に哲学
堂が建設され、現在は中野区の哲学堂公園となっている) 。この計画の費用三十万円は寄付募集により、
そのために創立以来の入学者三千、館外員三万のほか、それまでの寄付者二万数千人の協 力を仰ぐ考えであった。
Ⅱ 教育理念の発展
「大学部開設予告」の中で、井上円了は、哲学館の「益友とも先輩とも」いうべき慶応
と早稲田の名を挙げて、慶応はすでに大学部を開設し、早稲田も前年から準備にかかって
いるので、哲学館もその優れた例にならって大学部開設に着手することになったが、これ
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はそのような機運が高まったためである、というような趣旨のことをいっている。この時
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