井上円了の教育理念

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- 彼はまた東洋図書館設立についても触れている。学校に図書館がないのは、兵士に武器
がなく、銃に火薬がないのと同様であって、東洋大学に国書、漢書、仏教書を揃えた東洋
図書館があって、はじめて東洋学を樹立することができるという考えから、 「哲学館付属
東洋図書館」を建設するつもりであることを述べ、人々の協力を求めている。
井上円了が専門科設置すなわち大学設立のために行った全国巡講による募金活動は、日
清戦争の間中断していたが、この年の三月から再開された。まず長野県下を巡講して、哲
学館東洋大学科新築費として千八百五十六円の寄付を受け、順調な滑り出しをみせた。ま
た、六月八日には、井上円了に文学博士の学位が授与され、盛大な祝賀会が催された。
十二月にはようやく漢学専修科設置の旨趣の発表にこぎつけ、大学設立へ向けて一歩前 る。
進したが、哲学館はここで思わぬ不幸にみまわれた。火災によって校舎を全焼したのであ
Ⅱ 教育理念の発展
校舎の火災
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明治二十九年十二月十三日は日曜日であったが、哲学館校舎を共用していた郁文館は、
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