井上円了の教育理念

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- 欠如している女子教育にも力を入れる。場合によっては、地域の実情にあわせて、冬期学
校、夜学校、貧民学校、幼稚園を併設することも考えていた。
一方、宗教家についての考えはこうである。当時、仏教系の私立学校はいくつかあった
が、すべて各宗各派の仏教教団が設立したもので、それぞれの僧侶養成を目的として、宗
派の学問を専門としていた。井上円了は、将来の宗教家のあるべき姿として、まず東西両
洋の哲学を学び、それから専門の修行をするなり、各宗派の学校でそれぞれの教義を学ぶ を哲学館で行おうとした。
ことが望ましいと考えていたが、哲学を教授する学校は帝国大学しかなかったので、それ
また、井上円了は、宗教家すなわち仏教家を教育家とも結びつけて考えていた。仏教が
隆盛だった江戸時代には、学問教育は仏教家が掌握していたが、明治になって仏教家の学
識が低下して教育に携われなくなっていて、これが仏教衰退の原因の一つでもあると彼は
考えた。そこで、仏教家が教育家を兼務できるようにすれば、仏教の勢力を回復すること これを哲学館の急務とみなした。
にもつながる。そのためにはまず仏教家の学識を中等以上のレベルに高める必要があり、
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