井上円了の教育理念

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- 人間は肉体と精神の二面を持っている。肉体を錬磨する方法として運動や体操があり、
これによって健康を維持しているが、精神面でも同様のものが必要である。哲学はそのた
めの学問であり、思想錬磨の方法である。ニュートンの万有引力やコペルニクスの天文学
上の発見などは人間の思想活動によって想像力(創造力)が高められた結果であるが、思想
や精神は決して自然に発達するものではないので、身体を鍛えるのと同様に精神を訓練す
る必要がある。それが哲学を学ぶことである。哲学はものの見方、 考え方の基本であって、
学生時代に哲学を学び、思想を錬磨し、他に応用する能力が身につけば、それでよい。研
究者にでもなるのでなければ、特に学者の諸説を暗記する必要もない。以上のように、哲
学は普通教育として、思想錬磨の術として万人に必要なのである。
Ⅰ 教育理念の形成過程
そして、哲学館の教育の基本は、この「哲学を学ぶこと」であった。
教育家と宗教家の養成
創立から五年もたつと、哲学館の名だけは全国的に知られるようになったが、そこでは
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どのような学科を教授し、どのような人物を養成するのかという具体的な教育内容につい
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