井上円了の教育理念

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- ろいにせよ、むずかしいにせよ、家を富まし国を強くすることに関係なく、実用的な学問
ではないと考えている人が、百人中九十九人までいたことでした。ですから、哲学を勉強
することは、道楽者か物好きがやるものととらえられていたのです。そのため私は、でき
る限り哲学をわかりやすく人々に話すことにつとめました」
哲学は思想錬磨の術
井上円了は全国巡講をしていて、いつも同じ質問を受けたという。それは「哲学とは何
か」そして「哲学は必要なものなのか」ということであった。地方では、哲学を理解する
人はまれで、学ぼうという人はまったくいなかったので、彼らは哲学は容易に理解できな
い至難の学問であり、日常的に役立つものではないと受け止め、哲学者を奇人や偏屈人と
見ていた、と彼は記している。こういう誤解を解くためにも彼の講演は必要だったが、先
の質問に対する回答は、 雑誌『天則』に掲載された「哲学ノ効用」に端的に示されている。
彼は、哲学は「士農工商誰人にも」つまり万人にとって、 「思想錬磨の術」として必要な
学問だといっている。その効用について要約すると、つぎのようになる。
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