井上円了の教育理念

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- 「誤解の代表的なものは、 哲学を禅や仙人の学問と考え、 よほどおもしろいことを説く、
奇々妙々の学問という考えです。そのためつぎのようなことがありました。
哲学者っていうのはひげが長く、身は軽く、仙人のような人で、今度、東京よりその大
家がきて話をするそうだ、ということで、おもしろいものをみたいという人々が旅館の前
にたくさん集まっていました。ところが、 私のように仙人らしくない人物が到着したので、 こともありました。 ガク〟という言葉を〝鉄学〟と誤解したからです。
Ⅰ 教育理念の形成過程
人々の中には〝哲学者をいつわるにせ者が井上円了の名前をかたってきた〟といいふらす
またあるところでは、私のことを〝鍛冶屋の先生〟という人がいました。それは〝テツ
そのほか、哲学はあらゆる学問に通じ、なにひとつわからないことはないものだという
ことからの、いろいろな誤解が生まれ、詩や俳句の添削を請う人、書画骨董の鑑定を頼む には閉口しました。
人、はなはだしい場合は茶の湯や生け花の品評、人相手相の判断を頼む人もあって、これ
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しかし、このような誤解はまだいいのですが、私が残念に思ったことは、哲学がおもし
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