井上円了の教育理念

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- の言葉にして語ったので、それが哲学の知識のない人々に哲学への関心を植え付けるうえ 哲学館への入学を勧めたという例も少なくない。
で、もっとも適した方法だったのである。そのため、彼の講演を聞いた人が子供や知人に
彼は民間の立場で哲学を民衆に広めることを使命と考えていたが、それは著作や講演に
よるばかりではなかった。明治二十三年からは哲学館内で 「日曜講義」 という講座を設け、
社会人に哲学館を開放するようなことも行った。今日でいう公開講座である。
誤解される 「哲学」
全国各地において、哲学の普及を目指した井上円了は、 「哲学の大家」として優待され、
また哲学に関する講演を依頼された。しかし、この全国巡講の状況は必ずしも一様ではな
かった。熊本市での例のように、満堂の聴衆に向かって熱演する場合もあれば、集まる人
も少なく空しく柱を相手にして演説することもあった。このような講演の盛況や不況は、 うに記している。
人々の哲学に関する誤解に起因することが多かった。それについて、井上円了はつぎのよ
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