井上円了の教育理念

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- したがって、国家主義(日本主義)と宇宙主義とは決して切り離すことができないもので
あるばかりか、二つは一つになることによってはじめて完全となる。どちらか一方だけと
いうことはあり得ないのである。彼はこれを図解してみせた(図
) 。右側が表面、左側が
裏面を表している。表面の日本主義は言語・宗教・歴史によって構成され、日本独立の精 追究する。彼はこれを哲学館の主義として掲げた。
神的基礎を確立し、その裏面においては、宇宙主義すなわち宇宙の真理・哲理(哲学)を
人間性の重視
ところで、哲学館の移転式の演説で、井上円了は「知徳兼全の人を養成する」ことに触
Ⅰ 教育理念の形成過程
れていた。彼はまた「哲学館の改良」の中でも、知育がいかに進歩しても徳育も平行しな
ければ効果がないといっている。つまり、知識教育だけでなく、人間性を高めるような教
育をしなければならないという考えであった。しかし、人間性を育てることは、知識を教
育するようなわけにはいかない。あくまでも本人が自分のために自覚し、実行することが
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重要である、というのが井上円了の方針であった。彼は、このような人間性の育成を重視
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