井上円了の教育理念

- ページ: 63
- 独立をめぐる政府と民間との立場の違いという問題があったのである。彼らは政府の欧化
主義に反対を唱え、 「日本主義」あるいは「国粋主義」をスローガンにしていた。しかし、
彼らは西洋の学術的文化的知識を持つ新しい知識人であったので、その内容は盲目的排外 保存しようと主張していたのである。
主義を意味していたのではなく、あくまでも西洋の長所を認めながら、日本固有のものを
日本主義と宇宙主義
井上円了がいっている「日本主義」は、日本という一国に限定されたものではない。移
転式に先立って『哲学館講義録』に掲載された「哲学館目的ニツイテ」で、彼は「日本主
Ⅰ 教育理念の形成過程
義」とともに「宇宙主義」を掲げていて、この二つは切り離せないものであることを示し ている。
日本の独立を達成するためには、少数の学者や上流階級など一部のものだけではなく、
国民全体が「独立の精神」を持たなければならないが、 それには第一に言語、 第二に歴史、
59
第三に宗教を完備する必要があり、これによって「一国独立の風」ができる。これが基礎
- ▲TOP