井上円了の教育理念

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- 井上円了はこの日の演説で、まずこれまでの哲学館の開館旨趣を紹介したあと、外遊の
結論から導き出した哲学館改良について、四項目をあげた。
第一 わが国旧来の諸学を基本として学科を組織すること 第三 知徳兼全の人を養成すること
第二 東洋学と西洋学の両方を比較して日本独立の学風を振起すること
第四 世の宗教者、教育者を一変して言行一致、名実相応の人となすこと
さ ら に、 「他日一箇の専門学校を開き国家独立の大機関ともいうべき歴史科・言語科・
宗教科を分ち日本大学ともいうべきものを組織し、学問の独立と共に国家の独立を期す」
と述べて、哲学館を国家の独立を維持するために必要な言語、歴史、宗教を研究する「日
本大学の組織」 「日本主義の大学」にする決意を明らかにした。
こ こ で い う「 日 本 大 学 」 「日本主義の大学」とは、組織や学科から教師、テキストまで
西洋にならった「西洋の大学」に対する表現であって、西洋に学ばないということではな
い。基本にあるのは日本固有のものの改良という考えであって、そのためには西洋の学問
のよい点は活用しようという考えがある。彼はまた、この「哲学館の改良」の方針を、雑
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