井上円了の教育理念

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- (欧州)大陸は外面まで衰微の 力を示し、内部は余程衰えたるように相見え候。しかして、
徴候を現じたること、一目して人の知るところにござ候」 とつけ加えている。 『欧米各国政教日記』の「東洋学校」の項で述べている。
これは自分だけの考えではなくて、欧米周遊の人や現地に住んでいる人の見解でもある
また、もう一つの目的は、欧米における東洋学の状況視察であったが、これについては
「西洋諸国にて東洋学を研究するに至りしはこの第十九世紀のことにして、諸国に東洋
学校の設立あるに至りしはきわめて近年のことなり。ドイツ、フランス、オーストリアは
各東洋学校を設立し、独仏両国の東洋学校には日本学の部あり。英国の大学中にはサンス
Ⅰ 教育理念の形成過程
クリットおよびシナ学の教授あり。サンスクリットおよびシナ学はイタリアおよびロシア
にても講究するなり。西洋にて東洋学を研究することかくのごとく盛んなるに、日本は自
国の諸学を捨てて、ひとり西洋学を用うるははなはだ怪しまざるべからず」
無批判に西洋のものを取り入れる日本の欧化主義に疑問を投げかけている。彼はさらに
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この外遊から、欧米諸国の富と力を支えているものに気がついた。それはどの国の人民も
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