井上円了の教育理念

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- ていた。藤島もベルリンにやってきて、三人は今後の哲学普及の方法を語り合い、またハ
ルトマンという哲学者を訪ねたという。その後、ベルギーを経てパリに戻り、世界万国博 である。
覧会を見学した。一八八九年のパリ万博といえば、エッフェル塔が建設されたことで有名
帰路は、マルセーユから船に乗り、エジプト、アラビア、インド、中国を経由して、明
治二十二年六月二十八日、横浜に到着した。出発からまる一年後のことであった。
外遊 の結論
帰国後、井上円了は『欧米各国政教日記』上下二編を発表した。訪問地で見聞した事柄
Ⅰ 教育理念の形成過程
が、宗教、風俗、習慣を中心に、二百九十一のテーマに分けられ、客観的に記述されてい る。
例えば、 「食事の礼拝」の項において、宗教的慣習を日本と比較して、 「英国にて宗教信
者の家を見るに内仏神棚のごときものはさらに安置せず。 ゆえに朝夕礼拝を行うことなし。
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ただ国教宗の家にては誦すべき文句あり。これを晩食のとき食卓に対して口誦するを例と
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