井上円了の教育理念

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- をはかるつもりであると述べて、演説を締めくくっている。
哲学館の必要性
では、哲学館の誕生にはどのような期待が寄せられていたのだろうか。外山正一は祝辞
の中で、哲学と哲学館の必要性について、つぎのようなことをいっている。
「高等教育機関は帝国大学だけだが、これは修学の年限が長く、学費もたくさん必要で
ある。現在、学問をしたいと願う人々が多いという〝世の需要〟にもかかわらず、学校は
不足しているので、 〝専門学校〟が必要になってくる。そもそも一国の文明を開くという
ことは、一人二人の知識人がいるだけでは達成できず、やはり一般人民が知識に富むよう
Ⅰ 教育理念の形成過程
にならなければならない。そのために法律・医学・政治・経済などの速成学校(専門学校)
が多くできるようになったが、哲学の学校というのはなかった。哲学館はその欠点を補う
意味がある。世間には哲学思想をあまり重視しない人もいるが、歴史を書く、宗教を論じ 思想によらずにできるものはない」
る、美術の改良を論じる、人倫を研究する、さらに国の隆盛をはかるにしても、哲学上の
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