井上円了の教育理念

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- 第三 原書に通ぜずして洋語を理解できない者
そして、 哲学館はこれらの人々に哲学を教授するが、 その目的は哲学者の養成ではなく、
哲学を学ぶことにあるとしている。哲学は諸学の基礎となるものであるから、社会に出て
一つのことを達成しようとする人は、哲学諸科を心得ているべきであり、また教育家や宗
教家になる人が学べば、専門の学問の理解を助けることにもなる。哲学館は、このように
活用範囲の広い哲学を日本語で教え、速成するための学校だといっている。ここで彼が考 るべきことであった。
えていたのは、哲学館は彼自身が学んだ東京大学の哲学科をモデルとして、その速成科た
さらに、哲学館には学問上においても大きな役割があると、彼はいっている。まず、哲
学は西洋諸学の関係を知るのに便利であること。そして、哲学を学ぶことによって、東洋
の学問、特に東洋哲学の空想的で憶断にたよるという欠点を補い、その活性化をはかるこ 校が必要となるのである。
と。そのためには、西洋哲学と東洋哲学を同時に学ばなければならず、哲学館のような学
彼は、開館した哲学館が「仮教場」であり、いずれ校舎を建設して、 「哲学館の独立」
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