井上円了の教育理念

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- 歌人であり、また和歌の研究者として今日でも広く知られている佐佐木信綱は、この式
典に哲学館の第一期生として参列していた。彼は井上円了の『哲学一夕話』などによって
哲学に対する興味をかきたてられ、帝国大学の古典科と国民英学会に学ぶかたわら、哲学
館にも通うことにしたのである。彼は「開校当日、麟祥院へ行ってみると、本堂にだいぶ
たくさんの人がおりました。自分の第一印象としては、自分と同じく哲学を知ろうとあこ 感想を記している。
がれている人がこのように多いのだろうかと、驚くとともに喜びました」と、そのときの
哲学を学ぶ こと
Ⅰ 教育理念の形成過程
井上円了が開館式で行った演説は、 「哲学館開設ノ旨趣」の内容をさらに発展させたも ので、哲学館の目的を詳しく述べている。 第一 晩学にして速成を求める者 第二 貧困にして大学に入ることが不可能な者
彼は、哲学館における教育の対象者を、つぎの三点にまとめている。
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