井上円了の教育理念

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- 性を述べ、哲学館創立の目的に及んでいるが、これを要約するとつぎのようになる。
「文明の発達は主として知力の発達によっている。知力の発達を促すものは教育という
方法であり、高等な知力を得るためにはそれに相応する学問を用いなければならない。そ
の学問とは哲学である。哲学は万物の原理を探り、 その原則を定める学問で、 いわば法律 ・
政治から理学・工芸にいたるすべての学問世界の中央政府にして、万学を統括する学問で
ある。しかし、哲学を専門に教授しているのは帝国大学だけであり、翻訳書が多く出てい
るとはいっても、それを読んだだけで原文の真意を理解することはむずかしい。そこで、
それぞれの分野の学士と相談して、哲学専修の一館を創立し、これを哲学館と称すること
にする。ここでは大学の課程に進むだけの資力のない人(余資なき者)ならびに原書を読み
こなせるようになるだけの時間的余裕のない人(優暇なき者)のために哲学を速く学べるよ
うにし、一年ないしは三年で論理学、心理学、倫理学、審美学、社会学、宗教学、教育学、 し、文明進歩の一大補助となるであろう」
哲学、東洋諸学などを教授する。哲学館の教育が成功すれば、社会、国家に利益をもたら
この文章は設立の協力を求めるために、知人や著名人に送られるとともに、雑誌にも掲
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