井上円了の教育理念

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- と違いとが生まれます。そこで問われるのは、人間としてどのような生き方や文化の享受を望む
か、何をもって幸福とするか、という価値観の違いであり、そのことは制度や政治、社会の在り
方にジワリジワリと染み込んでいきます。それゆえに、人間としての価値について深く考えるこ いうことに向き合うことが求められるのです。
と、自分という個を形成し、自己を既定している文化的な規範や受けてきた教育、喜びの源泉と
以上のように、円了先生の思想や言葉と行動には、現在私たちが置かれている困難な状況を乗 ださい。
りこえていくための智慧がたくさん読み取れます。読者の皆さんも自分なりに探し出してみてく
最後に、円了先生の描く教育の壮大さを再度確認しておきましょう。
「この世界は実に広大無辺の教育場にして、 万物万端を備具せる大学校なり。 星辰も教師なり、
山川も教師なり、ないし禽獣虫魚、木竹草苔みな教師ならざるなし。その範囲無限というべ 一一巻所収)
し。 」 (井上円了「教育総論」 「哲学館講義録」明治二五年・二六年掲載、 『井上円了選集』第
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