井上円了の教育理念

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- ろんのこと、さらにその先にそれでも簡単には解けない謎を「真怪」として追究する姿勢を持つ
ことが必要だと示唆してくださっているように思います。 「 真 怪 」 ま で 迫 る こ と、 つ ま り 哲 学 す
ることで、人間としての生き方の本質を追求することが、 「正しく恐れる」ためには不可欠であ
ると思います。円了先生は、本質を見極め、より深く真理の探究をする場として大学を考えてお るのです。
られた、その在り方が「諸学の基礎は哲学にあり」という本学の教育理念として語られてきてい
第三に、世界の知恵を結集することで自らの位置が見えてくるという発想です。円了先生は幼
少期からの膨大な読書と研鑽により、東洋と西洋という学問の在り方の違いを体得し比較分析を
続け、生涯に三度の世界旅行においてそれを実際に検証されました。さらには、得られた知見を
民衆教育に還元するために、人生の後半は社会教育に捧げたのです。
宗教、地理、歴史、そして文化の違いを超えて、共通する真理に迫ろうとする姿勢、それが今、
パンデミックに対処する際に求められています。新型コロナウイルスの正体の解明は、世界共通
あとがき
のテーマです。 その解明によってなされる治療や対策も基本的には共通すると思います。 しかし、
この状況をどのように受け止めて、経済活動や人々の文化的な生活を位置付けるか、教育におい
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てどのように生かしていくか、には違いが生まれます。コロナ後の社会の在り方に共通する部分
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