井上円了の教育理念

- ページ: 195
- 自助の確立」へ、 早稲田大学は「学の独立、 進取の精神」から「庶民の心を心とする感性」
へ、などと各大学それぞれに建学の精神の現代化に取り組んでいる。そして、東洋大学は
「諸学の基礎は哲学にあり」を原点とし、その現代化の研究を進めている。
新し い建学の精神を求めて
私立大学における建学の精神の現代化は、戦後の日本社会の変化に対応したものであっ
た。国民の意識を五年ごとに調査した結果をみると、昭和五十年前後を境に構造的な変化
が現れていた。明治維新にはじまる「文明開化」 「富国強兵」 「経済発展」という、ヨーロ
Ⅳ 新しい教育理念を求めて
ッパやアメリカをモデルに追求されてきた日本の近代化が終幕を迎え、新たな時代の創造 期に入ったのである。
日本はオイル・ショックなどによる経済の混乱期を脱して、再び世界経済の主役となっ
ていた。しかし一方で、教育界では校内暴力やいじめの問題が発生し、偏差値教育の弊害
が問題になっていた。戦後の社会構造が生み出すひずみが、諸問題の形をとって少しずつ
表面化しつつあった。世界と日本の関係、日本の全体と個の関係など、激しく変動を求め
191
- ▲TOP