井上円了の教育理念

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- なかった時代でもあった。この時代は高度経済成長に入っていたため、就職などにおける
学歴重視の社会構造が生じたことを背景として、進学率が増加し「受験戦争」と呼ばれる
状況が生まれ、そこでは「偏差値」という単一の尺度がクローズアップされた。そして、
偏差値によって大学はランクづけされ、それが各大学の相違点であるとする一面的傾向が
助長されてきた。こうして国公立大学も私立大学もその特徴を失ってしまった。つまり、 である。
教育によってどのような人間を育成するのかという、大学の原点が見失われてしまったの
その結果、現代が第三期として位置づけられ、大学の原点が模索され、再び建学の精神
や教育理念が求められているのである。伝統ある私立大学も戦後の大学教育の流れの中で
変 化 し、 「もはや建学の精神は薄れた」とか「消滅した」と指摘されるようになった。し
かし、日本私立大学連盟が行った「建学の精神」に関する調査では、創立時の設立目的や
教育方針が、現代ではつぎの例のような標語や校訓となっている。関西学院大学は「知徳
兼備」から「奉仕のための練達( Mastery for Service) 」へ、 国学院大学は「神道精神」から「国
体の講明、徳性の涵養」へ、中央大学は「イギリス法の理解と普及」から「個人の自由と
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