井上円了の教育理念

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- れまでの同種の資料には建学以来の歩みが沿革としてまとめられていただけで、特に教育 精神というものは紹介されていなかった。
(明治二十年)ではじめて用いた言葉である。 「護国愛理」は井上円了が『仏教活論序論』
『仏教活論序論』は、当時旧思想として否定され衰退していた仏教を西洋哲学と同等のも
のとして位置づけ、文明社会における仏教の存在価値を証明しようとしたものであり、日
本仏教史では仏教近代化を象徴する著書として高く評価されている。その中では「護国愛
理」は「国家を思うこと」と「真理を愛すること」が「一にして二ならず」であることを
表現するために使われている。しかし、明治二十七年以後の著作にはほとんど現れてこな
いし、哲学館時代の教育方針等に関する文書にもこの言葉は使われたことがなかった。そ モットー」として取り上げられたのである。
れが、国家至上主義思想が強調された時代になって、その傾向に協調するように「本学の
国家体制 の枠組み の中で
その後、国家体制への傾斜はさらに強められていくが、そこには大学経営上の問題も絡
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