井上円了の教育理念

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- ともつかず殺すともつかぬ政略は害ありて益なし。……私立学校に相当の愛護を与え、従
来大体の基礎のできたる学校へはその資本を充実せしむるよう有志の義挙助力を策励する
方針をとり、私立にてでき得るだけの高等教育は私立学校に譲り、できがたきぶんだけ官
立にて引き受くる道を講ずるこそ、いわゆる教育上の民主主義である」
教育の国家統制
ところで、 大学令では私立大学を官立大学と同等の地位につけた反面、「国家思想の涵養」
という言葉に表されているように、教育上の国家統制的な色彩を明確にしていた。昭和に
なり戦争という非常態勢下に入ると、この面からの統制が私立大学に加えられてくる。当
然、東洋大学もそのような動きに無縁ではなく、変化を余儀なくされた。
大正時代までの東洋大学について、 中島徳蔵はこう記している。「いかにも規模は小さい、
やり方ははなばなしくない。けれどもそれだけここに満ちてる空気は質実である、自由で
ある。どこを顧みてもおよそ大きな組織機関となれば、支配力が強大で、したがって権威
が理性を圧し、感情が権威に阿付する(おもねる)欠点短所がうかがわれやすい。これにお
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