井上円了の教育理念

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- 哲学の応用
井上円了は常に学生に「空論を止めて、事実をもってせよ」と語り、実践的姿勢を求め
た。そして、卒業生が社会において哲学を応用することを願っていた。哲学を学んだ人間
が社会に出て、その成果を発揮することができれば、それによって日本社会の活性化をう
ながし、彼の目的である日本人の改良につながると期待したのである。
しかし、近代初期においては、実用的な知識や技術の要求度は高かったものの、哲学と
いう理論的学問を学んだ人にとっては、職業選択の幅が限定されていた。彼は哲学を社会
で直接応用できる職業として教育家と宗教家を考えた。特に教育家には、日本の中等教育 ことを望んでいた。
を振興・発展させるため、また哲学館の精神を普及させるために、地方に学校を設立する
社会が発展するにつれて職業選択の幅は広がり、哲学館事件以後は卒業生が哲学を応用
する職業の範囲を従来よりも拡大することを奨励した。 「諸学の基礎は哲学にあり」とい
う基本的な考えのもと、基礎である哲学を学んだものがさらに専門知識を学んで、哲学の
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