井上円了の教育理念

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- 的である。そもそも大学なるものは知識を与うるところであるのか、そもそも知識を得る のみちを教ゆるところであるのか」
このような教育界にあって、哲学館の教育は開発主義であり、知識を得る方法を教える を重んじたのである。
ことにあった。そして、 そのために哲学や思想を広く教授したが、 その際には「自由討究」
以上は知育(知識教育)の面であるが、哲学館では徳育(人間教育)も重視された。井上円
了は学校を「人の人となる道」を学ぶ場と考え、知識を与えるだけではなく、感性を磨き
人間性を高めることによって、バランスのとれた人格を形成しようとした。これを具体化
したのが寄宿舎であり、朝夕開かれた茶会であった。彼は自ら学生たちと対話し、人間性
Ⅲ 井上円了の教育理念
を養う環境をつくったが、そこでは学生一人ひとりの人格が尊重され、彼らがどの立場、
どの主張をするかは、それぞれの選択・決定にまかされ、強制することはなかった。彼の
このような人間交流を重視した教育は、 「私塾の精神」に基づいたものであった。
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