井上円了の教育理念

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- の姿は実に生き生きとしていた。
民衆を教育対象と考えた井上円了は、人々を「遠大なもの」と「活発なもの」を身につ
けた人々に育成することを〝日本人の改造〟あるいは〝改良〟と称した。そして、さまざ
まな実業に従事する生活者に合理的な知恵を得る方法を教え、合理的な知恵の通路を開く
だけでなしに、ここを通って人々に〝安心立命〟を得させることを考えた。これが学問と
宗教の二つによる日本人の改造として、井上円了の教育理念に位置づけられていた。
日本と比較して西洋の富と力の強大さを痛感した井上円了は、その差が精神面に発する
ことを見抜き、日本人の改造においては、人間の生活を方向づけ、また支えている精神活
動を重視した。すでに述べたように、当時の民衆の知見や生活は近代以前のまま取り残さ
Ⅲ 井上円了の教育理念
れていた。彼はこういう民衆を、精神の「改造」 「改良」によって、 「遠大なものと活発な
もの」を身につけた人間に育成してこそ、当時の日本の課題であった富国強兵、国家の強 そして、その方法を教育に求めたのである。
大化、民力の強大化も達成可能となり、西洋先進諸国に追いつくことができると考えた。
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