井上円了の教育理念

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- ❷ 井上円了 の教育理念
開放主義
井上円了はその生涯を教育に捧げ、さまざまな事業にエネルギッシュに取り組んだが、
その活動を内面で支えていたのは信仰であった。彼は親鸞を開祖とする真宗の信仰者とし
て寺に生まれ、僧侶として寺を継ぐことはなかったが、信仰は彼の中で生き続けた。
しかし、これまで見てきたように、彼は哲学館という公的な教育と自分の信仰とを明確
に区別していた。それは、哲学館で宗教者を養成するというときに、仏教の宗派的教義に
とらわれなかったことからもわかる。 「余の信仰告白」と題した一文で、彼は「余の真宗
信仰は他の信者のごとく、猛偏屈なるにあらず」といって、自分は真宗を信じているが、
他人がどの宗教を信じるかは問わないし、むしろ教団からの束縛を脱した自由討究・随意
信 仰 で あ っ て、 「開放主義」の立場であることを明言している。つまり、彼の信仰は、表
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