井上円了の教育理念

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- のではなく、ごく一般の人々が哲学を学ぶことによって、 「ものの見方や考え方の基礎」 例をみない極めて特異な存在であった。
を身につけることを教育目的とした。このような独特の教育内容を持った学校は、ほかに
東洋大学のように明治時代に創立された私立大学は、いずれも当初はなんらかの専門学
校であって、その専門分野がそれぞれの学校の特色となっていた。それらは内容的には大
きく二つに分類することができる。第一は法律や医学などのように実用的な学問を教える
学校で、これらは文明開化によって西洋から取り入れられた新しい学問、知識、技術など
の普及を目的としていた。第二は特定の信仰に基づいて設立された学校で、キリスト教の
布教活動の一環であったり、仏教の僧侶の教育が目的であったりした。哲学館の哲学も西
Ⅰ 教育理念の形成過程
洋からもたらされた学問には違いないが、普遍的で根本的な真理を求める学問であるとい
う点に特徴がある。また、哲学を応用するという意味で宗教家の養成も哲学館の目的の一
つに掲げられていたが、これも特定の宗教とか宗派に限定したものではなかった。この点
からみて、哲学館は二つのいずれにも分類することができないのである。
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ところで、専門学校の特色というのは、いいかえれば建学の精神の違いということにも
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