井上円了の教育理念

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- ❶ 哲学館設立 の背景
設立 の原点は哲学
東洋大学の前身「哲学館」は明治二十年(一八八七年)に創立された。当初はその名が示
すように「哲学専修の一館」すなわち哲学を教授するための専門学校であった。それから
一世紀を経て今日のような総合大学へと大きな変貌をとげるまでには、内的または外的な
状況の変化に伴ういくつものターニング・ポイントがあったが、そこで行われる教育に一
貫して流れているもの──哲学館創立の精神──は変わることなく引き継がれてきた。そ
れは現在では「諸学の基礎は哲学にあり」という言葉で象徴的に示されている。
哲学館の創立者井上円了は、哲学は「思想錬磨の術として必要なる学問」で、人は肉体
を錬磨するために運動や体操をするように、精神を錬磨するために哲学を学ぶ必要がある
と考えた。つまり、哲学館では哲学を教授するとはいっても、哲学者を養成しようとした
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